ブレッドボードラジオLM 3909

LM3909の内部回路

 (2005年6月5日 初稿)
 (2005年12月1日 第6図以降を追加)

第5図

 LM3909を購入したときおまけに付けてもらった資料には、このICの内部回路が出ていました。しかし私にはちんぷんかんぷんです。何か少しでも理解するための糸口がないかと探したら、古いラジオ雑誌でチャージポンプの原理についての短い解説記事を見つけました。チャージポンプとは、コンデンサの充放電を利用して電源電圧よりも高い電圧を発生させる回路です。まずこれを実験してみました。

第1図

 第1図の左側が雑誌に出ていたチャージポンプの原理図です。これに基づいて、右側のような回路を実際に組んで動作させて見ました。
 最初、切り替えスイッチをプラス側(回路図で上側)にしておき、次にマイナス側に切り替えると、その瞬間にLEDがピカッと1回だけ光ります。およそ1秒くらいの間隔でスイッチを上下に動かすと、マイナス側に切り替わるたびLEDが一瞬光ります。なぜそうなるかについて、私なりの理解を図にしたのが下の第2図です。

第2図

 第2図の上側は、スイッチが電池のプラスにつながったときの状態を表わしています。電池のプラスからコンデンサへ向かって電流が流れ、コンデンサが電源電圧とほぼ同じ電圧に充電されます。このとき、LEDの両端の電圧は順方向電圧(約2V)以下なので、LEDは光りません。
 スイッチを切り替えると、図の下側のようになります。コンデンサと電池が直列に接続される形になるので、LEDには電源電圧のほぼ2倍の電圧がかかり、点灯します。しかし、コンデンサにたまった電気は一瞬にして放電してしまうので、LEDはわずかな時間しか光りません。
 第1図右側の回路のブレッドボード上の配線図と写真を下に示します。

実体配線図1 写真1

第3図

 第3図左側は、スイッチを押しボタン式に換えてみたものです。スイッチを押すたびにLEDが1回光ります。この方が操作が楽です。
 右側は、スイッチの代わりにトランジスタを入れ、このトランジスタのオン・オフによってLEDを光らせるものです。図ではプッシュONのスイッチを使っているので、しばらく(1秒程度)スイッチを押し続けたあと指を離した瞬間にLEDが光ります。ここにプッシュOFFタイプの押しボタンスイッチを使えば、スイッチを押した瞬間に光るようにもできます。

第4図

 さて、上記のことをふまえた上で第4図を見てください。左側がメーカーの資料に載っていたICの内部回路図です。LEDとコンデンサ、電池をつないだ形で書きました。四角で囲んだ数字はICのピン番号を表わしています(3番と7番は無接続のため省略)。
 チャージポンプの部分に注目して書き直したのが右側の回路図です。これを見ると、LEDを点滅させる原理は第3図右側の回路に似ていることがわかります。TR1、TR2、TR4からなるごちゃごちゃした部分でTR3を一定間隔でオン・オフさせるしくみです。
 これでようやく、LM3909の基本動作の一端が理解できました。

 第5図は、LM3909の内部回路を個別の部品で組んだものです。 Model Railroad & Misc.Electronics というサイトの記事を参考にして作ってみました。ただし、オリジナルの回路とは定数などが少し違います。
 この「自作IC」に赤色LEDと100μFのコンデンサ、乾電池をつないでみたところ、LEDがみごとに点滅しました。点滅周期は約1.1秒で、ICとほぼ同じですが、消費電流は0.7〜1.9mA(点滅に合わせて増減)とかなり多くなりました。コンデンサの値を1μFにすればLEDを連続点灯させることもできます。
 ただ、電源ラインに入っているR9(100Ω)という抵抗は元の製作記事にはなかったものです。私の場合、この抵抗がないとLEDが1回光ったきりで消えてしまいました。どうしてなのかはわかりません。

(以下、2005年12月1日に追記)

 このページをご覧になった「"noritan"の趣味の部屋」のnoritanさんから「抵抗が1本足りないぞ」とのご指摘をいただきました。あらためて「Model Railroad & Misc.Electronics」の回路を確認してみると、あれーほんとだ、ICの内部回路にはない抵抗が1本追加されているのを見落としていました。これじゃうまくいくわけがありませんね。
 というわけで、正しい回路を下に示します。TR2のコレクタとTR3のベースの間に1kΩの抵抗が入ります。これで実験してみたところ、ちゃんと点滅してくれました。電源のプラスにつながっていた抵抗は必要ありません。点滅周期は約1.3秒、消費電流は同じです。

第6図

 ブレッドボード上の配線図と試作写真は下記の通りです。

実体配線図6 写真6

 noritanさんからは、ご自分で考案されたLM3909の代替回路も教えていただきました。下の第7図がそれです。回路定数は一部変更しています。第6図の回路との違いは、TR2が2個のトランジスタで構成されているところです。
 この回路もブレッドボードで試作してみました。点滅周期は0.8秒になりました。消費電流は0.3〜0.8mAと、第6図の回路の半分以下でした。

第7図

 第7図の回路のブレッドボード上の配線図と試作写真を下に掲げます。

実体配線図7 写真7