ブレッドボードラジオデジタルICの実験

インバータ3個の発振回路

 インバータICを3個使う発振回路について実験しました。前項「インバータ2個の発振回路」と同じことをやっています。稲葉保ほか著「トラ技オリジナルNo.8 実験研究 発振回路⁄信号発生器 完璧マスター」(CQ出版社) という本を参考にしました。

インバータ3個の発振回路

 図1

 図1は6回路入りインバータIC・74HC04Pのピン接続図です (前項からの使い回し)。実験に使用したのは日立のHD74HC04Pです。

 図2

 図2はインバータ3個の発振回路の基本回路図です。CとRの位置がインバータ2個のときと入れ替わっています。実際の配線では不使用のユニットの入力端子はVDDまたはVSSに接続します。出力端子は開放にしておきます。電源電圧は5V、電源ラインには0.1μFのバイパスコンデンサを入れました。

 発振周波数は 1÷(2.2xCxR) という式で求められます。インバータ2個の発振回路と同じです。ただし保護抵抗Rsの値や個々のICのスレッショルド電圧VTHによって周波数は変動します。上の定数では計算値は970Hzですが、実際の発振周波数は1230Hzになりました。

 インバータ2個の発振回路で疑問を持った保護抵抗Rsの値ですが、この発振回路の場合、上記の本によるとICが壊れない程度の大きさであればよいというふうに書いてあります。具体的には、電源電圧が5Vの場合は220Ω以上となっています。なので、今回の実験ではすべてRs=1kΩとしました。Rsをもっと大きくすれば周波数が下がって計算値に近づきますが、大きくしすぎると発振が不安定になります。

 図3

 上記は回路定数をいろいろに変えて発振周波数を調べた結果です。表AはCR値による周波数の違い、表Bは負荷抵抗RLによる違い、表Cは保護抵抗Rsによる違い、表Dは電源電圧VDDによる違いです。

 ここで気になるのはやはり保護抵抗Rsのことです。表では4.7kΩまでしか載せていませんが、Rsを10kΩ以上にすると出力周波数が不安定になりました。シュミットインバータ発振回路のときもそうでした。インバータ2個の発振回路でも、ICの種類のよってはRsを低くしないと周波数が安定しないことがあります。なぜインバータ2個のときだけRsを高くする必要があるのでしよう。

 上記の本 (著者は稲葉保氏) にはシュミットインバータ発振回路と今回のインバータ3段発振回路が載っていますが、いずれも保護抵抗については数kΩを推奨しています。インバータ2段の発振回路は扱っていません。インバータ2段発振回路のときに参照した鈴木憲次氏の著書は逆に、シュミットインバータ発振回路とインバータ3段発振回路の保護抵抗については何も触れていません。

発振回路の動作

 回路各部の波形と期間ごとの動作を示した図を掲げます。インバータ2段の発振回路と同じく、コンデンサの充放電が基本になっています。前項と同様の説明をまた書くのは面倒くさいので図を出すだけにします。C=0.01μF、R=47kΩ、Rs=1kΩです。Rsが小さいのでB点の波形の平坦部分がなくなっています。

 図4

ICによる発振周波数の違い

 各種のインバータICで3段の発振回路を組んで、発振周波数がどう違うか調べました。これも数字だけ並べておきます。保護抵抗はすべて1kΩを使用しています。

 図5

 図6

応用回路

 応用回路については別項「シュミット・インバータによる発振回路」および「シュミットNANDゲートICによる発振回路」を見てください。全部確かめたわけではありませんが、当サイトでやっている程度の回路なら、たぶん同じように動くと思います。

 図7

 図7は圧電スピーカーを発振回路のコンデンサの代わりにする回路です。シュミットインバータ発振回路では音が小さくてだめでしたが、今回はそこそこの音量で鳴りました。実験には12mm径の圧電スピーカーを用いました。Rを22kΩにしたとき、周波数は約3.5kHzでした。圧電スピーカーはこれくらいの周波数のときが一番大きな音が出ます。

 図8

 図8はLED2個の交互フラッシュ回路です。IC出力にコンデンサ (C2) が入っているので、LEDは一瞬だけ点灯します。出力がHからLになった瞬間にLED1 (赤) が一瞬点灯、LからHになった瞬間にLED2 (緑) が一瞬点灯します。ボリュームでデューティ比を変化させると点滅パターンも変化します。

 ボリュームのスライダーが中点付近にあるときは、LED赤と緑が等間隔で点滅します。スライダーを1番端子側へ移動させると、赤→緑の順で「パッパッ・・・・パッパッ・・・・」と点滅します。逆にスライダーが3番端子側にあるときは緑→赤の順で光ります。点滅周期は約1.6秒で、これは点滅パターンにかかわらずほぼ一定です。

 C2には積層セラミックコンデンサを使用しました。両端の電圧の極性が定まらないので、ケミコンは使わない方がいいと思います。C1とC3にも無極性のコンデンサが必要です。また、この回路は電源電圧が3Vですので注意してください。5VにするとLEDが壊れるかもしれません。

 ブレッドボード上の配線図と試作写真を下に掲げます。

実体図8 写真8