ブレッドボードラジオデジタルICの実験

シュミットNANDゲートICによる発振回路

 シュミットNANDゲートIC・74HC132Pを使った方形波の発振回路について実験しました。発振の原理はシュミットインバータと同じですが、発振のオンオフを外部からコントロールできるので応用範囲が広がります。

シュミットNANDゲート発振回路

 図1

 上は今回の実験に用いたシュミットNANDゲートIC・74HC132Pのピン接続図です。外形は14ピンDIP型です。入力がシュミットトリガになっているほかは、普通のNANDゲートと同じはたらきをします。実験には日立のHD74HC132Pを使用しました。

 図2

 図2はシュミットNAND発振回路の基本形です。保護抵抗R2を入れた形で書きました。NANDゲートの2本の入力を結ぶとインバータになるので、Aのようにすればシュミットインバータ発振回路と同じ動作をします。Bは片方の入力を制御用の端子にするものです。図1右の表でわかるように、ここをHレベルにすると他方の入力と出力の関係はインバータと同じになるので、回路は発振を始めます。逆に制御端子がLなら発振が停止します。こうやって発振をコントロールすることができます。入力の1番と2番を入れ替えても同じです。

 シュミットインバータ74HC14PとシュミットNAND・74HC132P (図2A) について、発振周波数の違いを調べました。オシロ画面の写真を下に示します。赤が入力、黄色が出力です。CR部品は同じものを使い、ICだけを挿し換えて実験しました。発振周波数は74HC14Pが973Hz、74HC132Pが1232Hzになりました。ずいぶん違いがありますね。74HC132PはVLとVHの間隔がせまいのでそのぶん充放電の時間が短く、周波数が高くなるようです。ただしすべての74HC132Pがこうなるのかどうかはわかりません。図2Bの回路もAとまったく同じでした。

 図3

応用回路例

 シュミットNAND発振回路の応用例をいくつか実験しました。

 図4

 図4は押しボタンスイッチを用いて発振のオンオフを制御する回路です。AとBはプッシュONタイプ、すなわちボタンを押すと接点が閉じるタイプのスイッチを使った回路で、スイッチを入れる位置によって、押したとき発振するようにも、あるいは押したとき発振が止まるようにもできます。R1をもう少し大きくすると水位検知にも使えると思います。CとDはプッシュOFFタイプのスイッチを使うもので、「断線ブザー」などに応用できます。

 図5

 図5は光センサーのCdSと組み合わせた回路です。Aは光があたると発振、Bは光がさえぎられると発振します。R1はCdSの感度や検知する明るさに合わせて調整する必要があります。CdSのようにオンオフの境目が明確でないセンサーを用いるときは、シュミットトリガ・タイプのICが適しています。

 図6

 図6は圧電スピーカーが「ピーッ、ピーッ、ピーッ、・・・・」というふうに断続的に鳴る回路です。IC2は約1200Hzの連続音の発振器、IC1はIC2の出力を1.2Hzで断続するための発振器です。

 図7

 図7も図6と同じ回路ですが、IC1の発振周波数が25Hzくらいになっています。こうするとIC2の発振が細かく断続されるので、「ピロピロピロ・・・・」というような音になります。

 図8

 図8は先の2つの回路を組み合わせて、虫の鳴き声に似た「リリリリ・・・・リリリリ・・・・」という音を出す回路です。IC4は1200Hzの「ピー」という音を出す回路、IC2は「ピー」音にビブラートをかける回路、IC1は全体を約1秒周期で断続する回路です。IC3はバッファーで、ここに1個挟んでおかないとうまく動作しませんでした。上の回路でも一応それらしい音は出ますが、本物の虫の声に似せるには回路定数をもっと細かく調整する必要があるでしょう。ブレッドボード配線図と試作写真を下に掲げます。

実体図8 写真8

 図9

 図9は救急車を模した「ピーポーピーポー」という音を出す回路です。IC3が高い「ピー」の音 (1220Hz) を出す発振器、IC4が低い「ポー」の音 (980Hz) を出す発振器です。IC1とIC2により、約0.9秒ごとに2つの発振回路が交互にオンになるので、「ピーポー」という音で鳴ります。圧電スピーカーでは音の高低の判別がしにくいため8Ωスピーカーをつなぎました。これも実体図と写真を出しておきます。

実体図9 写真9

 図10

 図10Aは中波ラジオにピーという信号を送信する回路です。IC2で約1MHzの電波を出し、IC1の低周波発振器で変調をかけます。アンテナは10cm程度のビニール線をつなぐと半径1mくらいの範囲で受信できます。図10Bは変調波を4Hzで断続するもので、「ピ、ピ、ピ、・・・・」という感じの音になります。Bの回路のブレッドボード配線図と写真を下に掲げます。

実体図10 写真10

 図11

 図11はLEDが短時間だけ光って「ピカッ・・・・ピカッ・・・・」と点滅するものです。ダイオードを使ってデューティ比を変えても同じ動作にできますが、ここではインバータの出力にディレイ回路 (遅延回路) を付けて短いパルスを作っています。R3とC2がディレイ回路で、抵抗値・容量値が小さいほど点灯時間が短くなります。

 下に回路図A, B, Cの各点の波形図を示します。点滅周期は860ms、点灯時間は90msになりました。LEDの一端が電源プラスにつながっているので、C点がLレベル (0V) のときLEDが点灯します。C点がLからHに戻るのはB点の電圧が2Vくらいになったときです。たぶんここがIC3の下側のスレッショルド電圧VLになっているのだと思います。

 図12