ブレッドボードラジオメーカー品ラジオ

ボード式6石スーパーラジオ

 チェリー (明光電機) のボード式6石スーパーラジオキット CK-666 を作りました。別項の「ボード式3石レフレックスラジオ」と同じシリーズで、昔からラジオ雑誌の広告でよく見かけるものです。18cm×12cmの基板上に各部品が回路図どおりの配置で並んでいるので、ラジオの動作を勉強するには好都合なキットです。ただ3石ラジオと同じく、基板裏の配線は面倒くさいです。

 写真1

回路と部品

 第1図

 上記がこのラジオの回路図です。おそらく6石スーパーとしては標準的なものではないかと思います。変わっているのはバーアンテナがタップ付きの単巻線タイプになっていることですね。スーパーでは二次巻線が独立したコイルを使うのが普通です。原理的には同じことなんでしょうが、実際にこういうコイルが使われている回路は初めて見ました。

 組み立てて放送を聞いてみたところ、感度・選択度ともに良好でした。ローカル局はボリュームを少し上げるだけで十分な音量になります。夜間には遠距離の放送が十数局受信できました。安価なスーパーラジオによく見られるビート混信もほとんど気になりません。音質は3石ボードラジオのようなキンキンした感じが少なく、落ち着いた音です。でもボリュームを上げすぎると音が割れてしまうのは同じです。基板をむき出しにするよりも、付属のアクリルケースに入れた方が聞きやすい音になります。

 トランジスタはすべて2SC1815ですが、TR1〜TR3はOランク、TR4〜TR6はGRランクが使われています。事前にhFEを実測したところ、TR1〜TR3はいずれも100、TR4は230、TR5とTR6は200でした。ボリューム (VR) は、説明書の回路図では5kΩになっていましたが、購入したキットには10kΩのものが入っていました。

 OSCコイルとIFTはともに10mm角です。説明書にはIFTのインピーダンスが記されていました。それによると、IFT1 (黄) は15k:150Ω、IFT2 (白) は33k:220Ω、IFT3 (黒) は37k:12kとのことです。黒は二次側のインピーダンスが大きいですね。2個のトランスはいずれもサンスイのST-30くらいの大きさです。D2は小信号用のシリコンダイオードだと思います。

 回路図中に記した電圧・電流値は放送を受信していないときのものです。ローカル局を受信して大きな音を出すと、出力段のコレクタ電流 (無信号時2.5mA) が10mAくらいに増えます。TR1のベース-エミッタ間電圧が0.4Vしかありませんが、これはTR1で局部発振をさせているためだと思います。VC2をショートして発振を止めるとベース電圧が高くなり、約0.6Vの電位差になりました。

AGC回路の動作

 第2図

 上記は中間周波増幅回路のAGCに関係する部分を抜き出した回路図です。図中の電圧値は上段が放送を受信していないとき、下段がローカル局を受信しているときのものです。先の回路図と電圧が違うのは時間をおいて測り直したためです。電流値は計算で求めました。

 放送を受信すると検波ダイオードD1の両端に直流電圧が生じ、D1のアノード側の電位が下がります。これによりR6を通してつながっているTR2のベース電位も下がるので、TR2のコレクタ電流が減少します。コレクタ電流が減少するとhFEの低下により回路の増幅度も下がるので出力電圧が小さくなり、結果として強い電波を受信したときとと弱い電波を受信したときの音量差が目立たなくなるという仕組みです。

 ただ、2SC1815というトランジスタはコレクタ電流が小さくなってもhFEはほとんど変化しないと聞いています。そのためこの回路で果たしてどれくらいAGCの効果があるのかは不明です。そういう先入観があるせいかもしれませんが、聴感上も、ちゃんとしたメーカー品ラジオに比べるとAGCの効きが甘いように感じられます。

完成写真と実体配線図

 下は製作前のプリント基板の写真です。3石ボードラジオと同じく、銅箔は一部分にしか付いていないので、あとはスズメッキ線でつないで配線します。全面プリントパターンにしてくれれば楽なんですが、これは学校教材用としての配慮なのでしょう。

 写真2

 下に完成した基板の表と裏の写真、および表側から透視した実体配線図を掲げます。実体配線図中、灰色の線で示したところは部品の足やスズメッキ線で接続します。製作にかかった時間は約4時間でした。途中から集中力が続かなくなったので汚い仕上がりで恥ずかしいです。

 写真2

 第2図

 写真4

古い電池が付いていた

 私はこのキットを科学教材社から購入したのですが、付属の電池 (006P) は使用期限が1992年5月になっていました。15年も前です。電圧は4Vしかありませんでした。当然ながらラジオにつないでもウンともスンとも言いません。このキットは何十年も前から広告に出ているので歴史のあるロングセラーかと思いましたが、単に売れ残っていただけなのでしょうか。

 ヤフーショッピングの中にある科学教材社のサイトには、「教材的で面倒なスーパーラジオキット」と紹介されています。なんとも正直なコメントですが、自社商品の広告でそんなふうに書いたらよけい売れなくなってしまうと思うんだけどなあ。ちなみに、3石ボードラジオに付いていた電池は使用期限が2008年2月でした。こちらはぎりぎりセーフですね。