ブレッドボードラジオその他の実験と製作

ブリッジ回路の実験

 直流ブリッジと交流ブリッジの基本動作の実験をしました。また、応用例としてコンデンサの容量計を試作しました。

第1図

 第1図は、古い「初歩のラジオ」誌に載っていたブリッジの基本回路です。
 左側は直流ブリッジです。R1とR2の接続点の電圧と、R3とR4の接続点の電圧が同じならば、電圧計の指示は0Vになります。教科書ではこの状態を「平衡(へいこう)」と言っています。ブリッジが平衡する条件は、図中にも記したとおり、R1xR4=R2xR3 となったときです。
 第1図の右側は交流を電源とするブリッジです。この場合は抵抗のほかにコンデンサやコイルを用いてブリッジを組むことができます。図に示したのは抵抗が2本、コンデンサが2本の組み合わせです。コンデンサの交流に対する抵抗は容量値に反比例するので、平衡条件は R1xC1=R2xC2 となります。

第2図

 第2図は今回実験した直流ブリッジ回路です。電源はDC6V、R1〜R4はそれぞれ10kΩの抵抗器を用いました。10kΩの抵抗といっても実際には誤差があるので、途中に5kΩのボリュームを入れて微調整することにしました。電圧計は正負両方向に振れる可能性があるので、デジタルテスタをつなぎました。
 ボリュームのスライダーをほぼ中央に持っていくと、電圧計の指示が0Vになりました。スライダーがR1側へ寄ると、回路図で電圧計の左側の電圧が右側より高くなり、プラスの電圧が出ます。スライダーをR2側へやると電圧計の表示はマイナスになります。

第3図

 最初に書いた通り、ブリッジ回路は R1xR4=R2xR3 という条件を満たしていればバランスが取れます。したがって、第2図の実験のように4本とも同じ抵抗値にする必要はありません。第3図はいろいろな抵抗の組み合わせで実験してみたものですが、いずれもボリュームの調整範囲内で平衡しました。

第4図

 第4図は交流ブリッジの実験回路です。基本回路と同じく抵抗2本、コンデンサ2本の組み合わせです。電源はヒータートランスの6.3V巻線を用いました。平衡の調節は直流ブリッジと同じ方法ではうまくいかないので、片側の抵抗を20kΩのボリュームに換えて調節するようにしました(初めからこうすれば良かった)。なお、回路図では省略しましたが、トランスの一次側にはスイッチとヒューズが入っています。
 電源を入れてボリュームを中点付近に合わせると、電圧計の指示が0Vになって平衡が取れました。ただ、電圧計にデジタルテスタを使うと、内部抵抗が高いせいか、電圧値は完全にゼロにはなりません。どうしても数mV残ってしまいます。

 電圧計と並列にクリスタルイヤホンをつなぐと、平衡に近づくようすを音で確認することができます。電位差が小さくなるにしたがって音も小さくなり、完全に平衡すると音が消えます。周波数が60Hzと低いのでイヤホンではどうかなと思いましたが、「ボー」という低い音ながら、平衡状態の直前までなんとか聞き取ることができました。

第5図

 第5図は交流ブリッジのバリエーションです。右端のように抵抗4本でもOKです。3例とも、ボリュームのほぼ中点でブリッジが平衡状態になりました。

第6図

 第6図はマルチバイブレータの出力をブリッジの電源にしたものです。発振周波数は約730Hzなので、イヤホンでも聞きやすい音です。20kΩのボリュームを中点付近に合わせると平衡が取れて音が消えました。平衡状態から離れるほど音が大きくなります。
 この回路のブレッドボード上の配線図と試作写真を下に示します。

実体図6 写真6

第7図

 第7図は交流ブリッジの原理を応用したコンデンサの容量計です。発振回路の部分は第6図と同じです
 測定端子に容量のわからないコンデンサ(Cx)をつなぎ、イヤホンで音を聞きながらボリュームを調節して、音が消えた時点のボリュームの抵抗値(つまみに目盛りを付けておく)からコンデンサの容量を知ることができます。
 第7図の回路の場合、測定端子に0.01μFのコンデンサをつなぐと、ボリュームを最大(100kΩ)にしたところでバランスが取れて音が消えます。0.047μFならば半分の抵抗値(50kΩ)で、また0.001μFならば10分の1の抵抗値(10kΩ)で平衡状態になるという仕組みです。

 このままでは測定範囲が狭いので、C4として、0.1μ、0.01μ、0.001μなど数種の基準コンデンサをスイッチで切り替えられるようにするのが普通です。また、容量が小さくても測定しやすいように、A型のボリュームを使うというアイディアもあります。
 私がラジオ雑誌で見た製作記事では、発振回路にトランスを使ったブロッキング発振回路を用いたものが多かったです。今回はあえてマルチバイブレータにしてみましたが、ちゃんと測定できました。それと、後で考えるとC3の部分は直結にしても問題なかったような気がします。

第8図

 第8図の回路はブリッジの部分が第7図と少し違っています。このようにすると、(理論上は)ボリュームの位置によってゼロから無限大までの容量を測定できます。測定するコンデンサが基準コンデンサC4(0.01μF)と同容量ならば、ボリュームの中点で平衡します。C4より小さい容量ならば、ボリュームのスライダーが回路図上で中央より上に行ったところで平衡します。C4より大きければ中央より下に平衡点があります。基準コンデンサ(C4)の10分の1から10倍程度が実用的な測定範囲です。

 第7図の方法でも第8図の方法でも、正確な測定をするためには、基準となるコンデンサや抵抗に誤差の少ないものを使用しなければなりません。また、数十pF以下の容量の測定では、測定端子自身のストレー容量(何もつながなくても平衡する点がある)を差し引く必要があります。
 電源電圧や発振周波数の変動は、測定値には影響しないようです。
 第8図の回路のボード上の配線と試作写真は下記の通りです。

実体図8 写真8

第9図

 第9図は、発振出力を整流して一方向の脈流にすることで、ケミコンなど極性のあるコンデンサも測定できるようにしたものです。ダイオードはショットキーダイオードの1SS108を用いました。
 C3, Cxともに、10μF以上になると発振音が小さくなってしまい、平衡点を見つけるのが少し難しくなります。

 (2005年9月13日)