ブレッドボードラジオ電源器の製作

真空管B電源用負荷試験器

 真空管ラジオのB電源(高圧電源)用の負荷試験器を作りました。FETのバイアス電圧をボリュームで可変して入力電流をコントロールする仕組みです。入力電圧は100〜300V程度を想定しています。最大入力は(計算上は)約20Wです。

写真1

 上が外観の写真です。アルミケースの上に放熱器を乗せました。前面に入力端子とボリューム、後面にはヒューズ、電圧計および電流計を接続する端子が付いています。放熱器部分を含めた大きさは、間口100mm、高さ57mm、奥行き70mmです。

回路図

 回路図は上記の通りです。2SK2996は最大定格600V,10A,45WのパワーMOS型FETです。このFETはエンハンスメント型なので、バイアスのかけ方はトランジスタと同じです。ドレイン〜ソース間がオンになるゲート電圧は実測で2.8Vくらいでした。ボリュームを回すとドレイン電流が0から100mA程度まで変化するようにR3とR4を決めました。しかし実際は入力電圧やFETの温度によっても電流が変化するので、なかなかぴったりにはなりません。電流が多いところで調節がしやすいように、ボリュームはC型を用いています。ソースに入っている4.7Ωの抵抗は、FETの温度が上がったときドレイン電流が急激に増加するのを抑えるためのものです。

 放熱器は大きさが98x70x17mm、熱抵抗が3.1℃/Wのものを用いました。2SK2996はフルモールド型(金属部分が露出していない)なので、アルミケースの天板を挟んで放熱器に直接ねじ止めしています。

放熱設計

 放熱設計については左図のように考えました。放熱器の熱抵抗は3.1℃/W、一方アルミケースの熱抵抗を4℃/Wと推定すると、両者の合成(並列)熱抵抗は (3.1x4)÷(3.1+4)=1.75℃/Wになります。FET本体と放熱器の間の熱抵抗は3℃/W程度なので、これを加えると全体で4.75℃/Wとなります。FETの最高温度は規格表から150℃、周囲温度の最高を50℃と見積もると、FETで消費できる最大電力は (150-50)÷4.75=21Wという計算になりました。こういう考え方でいいのでしょうか。

 21Wというと、100Vで210mA、250Vで84mAまで流せることになります。でも本当にこれだけ流しても大丈夫かどうかは試していません。ちなみに「真空管ラジオ用電源器(その1)」をつないで、115Vで100mA (11.5W) 流してみたところでは、放熱器がほんのり温かくなる程度で、まだまだ余裕がありそうでした。

( 追記 2005年12月3日 )
 上記の放熱設計について、「"noritan"の趣味の部屋」のnoritanさんからさっそくダメ出しがありました。FETの最高温度は、消費電力が多くなるとその分割り引いて考えないといけないそうです。以下、いただいたメールを引用します。

グラフ

 「放熱設計のところで、最高温度と消費電力の関係を勘違いされているようです。Googleさんに教えてもらった以下の仕様書 (bbradio注・東芝の2SK2996データシートのこと) をもとに書きます。
 この資料の4ページの左下のグラフ (bbradio注・左のグラフ) に、ケース温度と消費電力の関係(PD-TC)が書かれています。これによると、FETが21Wを消費する事ができるのは、ケース温度が90℃程度のときです。従って、ケース温度を90℃、外気温を50℃とすると温度差40℃で計算しなくてはなりません。そうすると、熱抵抗は40÷21≒2℃/Wと凄い放熱器が必要になるのがわかります。21Wの負荷には耐えられないと思います。最高温度というのは、一切の電力消費が許されない温度ですので、お間違えなく。
 ちなみに、11.5Wの時は、ケース温度120℃まで耐えられますので、120−4.75×11.5=65[℃]の外気温まで使用できます。」

 あらためて本器の耐入力を計算しなおしてみたところ、周囲温度が50℃のとき13W、40℃でも15W程度でした。したがって、250Vかけるときは50mAくらいでやめておいたほうがよさそうです。実際に試験する前に教えていただいて助かりました。noritanさん、ありがとうございます。
( 追記ここまで )

 内部の写真と実体配線図を下に示します。

写真2

実体配線図

 最後に、本器の製作に使用した部品と通販での購入価格の一覧を掲げます。すべてを新品で揃えると4000円くらいになります。

( 追記 2006年2月17日 )
回路図2
 FETのバイアス電圧を決める抵抗R3とR4の値は、電流が少ない状態(FETが冷えている状態)で決めたので、実際に使ってみると、負荷電流の調整範囲が中途半端になってしまいました。
 そこで、左の回路図のように両方とも50kΩの半固定抵抗に換えて、実際に動作させた状態で再調整することにしました。これで負荷電流の調整範囲を1〜100mAにすることができました。VR2,VR3ともほぼ真ん中(25kΩ)あたりにセットしています。VR3を小さくしても電流は1mA以下にはなりませんでした。
 小さい部品はサンハヤトのEG基板(ICB-504EG)上に組みました。改造後の写真と実体配線図を下に掲げます。

写真3

実体配線図2

( 追記ここまで )

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