ブレッドボードラジオ電子工作の基礎知識

ブレッドボードの使い方(その1)

 ブレッドボードは元々デジタル回路の実験を想定して作られたようです。そのため、これでラジオを組もうとするとボードに直接挿せない部品が出てきます。例えばコイル、バリコン、トランスなどです。これらの部品を使うには、ボードに挿せるようにあらかじめ予備加工しなければなりません。また、抵抗やコンデンサなど、リード線のついた部品はそのままでも大丈夫なんですが、ブレッドボードを使った実験を継続的に行なう場合は、ボードに挿しやすい形に整形しておいたほうが便利です。以下、部品のタイプ別に予備加工の方法を紹介します。なお、パネルに取り付ける部品については次章で取り上げます。

1. ジャンパー線

写真1  ジャンパー線は、ボード上の離れた穴どうしをショートするために使います。実物の写真を左に示します。単芯のビニールコードをコの字型に曲げたものは、ボードの表面で平面的に使います。以下、このタイプを「平面ジャンパー線」と書きます。一方、柔らかいより線コードの両端にスズメッキ線の端子をつけたU字型のジャンパー線は、途中の部品をまたいでジャンパーすることができます。こちらは「立体ジャンパー線」とよぶことにします。より線とスズメッキ線のつなぎ目はハンダ付けして熱収縮チューブを被せてあります。立体ジャンパー線は、片側をボードに挿したり抜いたりして、スイッチの代用にすることもできます。
 ジャンパー線は簡単に自作できますが、ある程度の数が必要ですので、各種セットになったものをブレッドボードと一緒に購入したほうが早いと思います。

2. トランジスタ・IC

写真2  SIP型、DIP型のICはそのままボードに挿せます。これが一番楽です。ただ、足ピンの数の多いICは抜き挿しの際にピンを傷めないように注意してください。3本足のトランジスタやFETは、写真のように両側の足を少し広げて0.1インチ(2.5mm)間隔にします。TO-220型とよばれるパワートランジスタは足が太くてボードに挿しにくいので、根元から5mmくらいのところで短く切って、代わりに0.6mm径のスズメッキ線をハンダ付けします。

3. ダイオード

写真4  ダイオード類はリード線を0.3インチ(7.5mm)あるいは0.4インチ(10mm)間隔になるように曲げておきます。脚の部分の長さは8mmくらいあるとボードにしっかり挿せます。LED(発光ダイオード)はリード線をカットしてしまうと極性がわかりにくくなるので、根元の部分にペイントで印をつけておくとよいと思います。

写真5

 ところで、部品のリード線を決まった間隔で曲げるのに便利な道具があります。左の写真に示すサンハヤトの「リードベンダーRB-2」です。希望する足間隔のところに部品を挟んで、横にはみ出したリード線をクイッと曲げるだけできれいに整形できます。(追記。RB-2はその後生産中止となり、代わって少し機能アップしたRB-5というリードベンダーが現在出回っています。2007年10月6日)。

4. 抵抗・コンデンサ

写真3  抵抗やコンデンサもダイオードと同じ要領で整形します。私の場合、足の間隔は原則として抵抗は0.4インチ、コンデンサは0.3インチと決めています。同じ定数で足間隔の違うものを何種類も揃えるのは大変です。このように決めてしまっても、ボード上の配置を工夫すればたいていはうまくいきます。
 最近は抵抗もコンデンサもどんどん小型化していますので、なるべく小さいものを選べばボードが広く使えます。かと言って極端に小さいものは逆に扱いにくいですが。
 写真の右端に写っているのはリード線タイプのコイル(インダクタ)です。これも同じようにリード線を処理します。

5. コイル

写真6

 さて、これが一番の難物です。でもラジオを作るとなるとどうしても必要な部品ですから、なんとか工夫する必要があります。実は私もいまだに試行錯誤している段階なんですが、とりあえず今使っているものを紹介します。
 まずバーアンテナですが、上の写真のようなものを作りました。巻線が細くデリケートな部品ですので、本体をユニバーサル基板(穴あきプリント基板)にしっかり固定し、コイルのリード線を基板裏のランドにハンダ付けします。コアの固定は専用のホルダーが入手できればベストですが、手に入らない場合は写真のように太めのエナメル線または単芯コードを巻きつけたものでも代用できます。ただしコードの両端が基板裏でショートしないようにしてください。
 ブレッドボード用の端子の出し方はふた通りあります。写真の左は基板上から「立体ジャンパー線」を出してボードに挿す方法です。基板はスペーサを使ってシャーシにねじ止めします。この方法は、回路を組んだ後でコイルのタップを切り替えるといった変更が楽です。
 もうひとつは、コイルの端子となるスズメッキ線を基板の裏にハンダ付けして、基板ごとボードに挿すやり方です(写真中および右)。この方法で作るとボード上はすっきりした感じになりますが、コイル端子の位置が固定されてしまうので、他の部品の配置に苦労することがあります。
 なお、ブレッドボード用の端子にするスズメッキ線の太さは0.6mmが適しています。また、端子を出す箇所には基板の穴に小さなハトメを打って補強しました。

写真7

 次にシールドケースに入ったコイル、つまりIFTやFCZコイルの類です。はじめはコイルの端子に直接スズメッキ線をハンダ付けしていました。写真の左側がそれです。一見簡単そうに見えますが、メッキ線を正しい位置(この場合は0.3インチ×0.3インチ)に持ってくるのが意外と難しいです。ブレッドボードの穴にぴったり合っていない状態で無理に押し込むと、コイルの端子に力が加わって断線することがあります。
 そこで、工作の手順は増えますが、バーアンテナと同じようにユニバーサル基板を使うやり方に変えました。出来上がりは写真右側のようになります。10mm角のコイルは45°斜めにすると0.1インチピッチの基板にぴったり入りますので、あとは基板裏にスズメッキ線の脚を付けます。この方式で作ると足間隔は0.4インチ×0.4インチとひと回り大きくなります。写真右端、7mm角のコイルの足間隔はタテ0.4インチ、ヨコ0.2インチです。(訂正。各コイルのサイズが間違っていたので訂正しました。2007年10月6日)。
 下は、各種コイルをブレッドボードに挿したようすです。

写真8

6. トランス

写真9  ST-32など、トランジスタ用の小型トランスはちょうどいい太さのリード線が出ていますので、その先にスズメッキ線の端子を付けてボードに挿せるようにしました。鉄心のカバーにもスズメッキ線をハンダ付けして、本体の固定と鉄心のアースに利用します。左の写真のような感じです。
 トランスもプリント基板に乗せて裏から端子を出したほうがすっきりしていいかもしれませんが、工作が面倒くさいし、トランス自体あまり使うことがないので、これですませています。

7. ユニバーサル基板について

写真10

 部品を固定するためのユニバーサル基板は、穴の周りに丸い銅泊が付いた普通のものでもいいのですが、私はサンハヤトのEG基板(ICB-504EG)をよく使っています。これはすべの穴が銅箔でつながって格子状のパターンになっているものです。上の写真左が通常のユニバーサル基板(ICB-96)、右がICB-504EGです。
 EG基板は本来エッチングで不要部分を溶かして使うものですが、私はプラスチックカッターで不要部分をカットしています。基板裏にスズメッキ線を這わせる必要がないので多少すっきりした感じになります。(追記。残念ながらICB-504EGは生産中止となってしまったようです。2007年10月6日)。