ブレッドボードラジオ発振回路の実験

非安定マルチバイブレータによる音出し回路

 非安定マルチバイブレータ(無安定マルチバイブレータ)を使った音出し回路の実験をしました。電子ブザーとか電子サイレンのたぐいです。

(追記 2006年9月7日)
 このページの一番下「アメパトサイレン」の実体配線図に誤りがあったので訂正しました。ご指摘くださったGさん、ありがとうございます。
(追記ここまで)

第1図
C1C2R2R3周波数
0.1μ0.1μ10k10k670Hz
0.1μ0.1μ4.7k4.7k1410Hz
0.047μ0.047μ10k10k1450Hz
0.1μ0.1μ4.7k10k910Hz
0.1μ0.1μ10k4.7k900Hz
0.047μ0.1μ10k10k940Hz
0.1μ0.047μ10k10k900Hz

 第1図は非安定マルチバイブレータによる低周波発振器です。スピーカーから「プー」という音が出ます。
 図の定数で発振周波数は670Hzになりました。LED点滅回路と同じく、C1,C2およびR2,R3の値によって発振周波数は変化します。そのようすを上右の表に示します。
 R4は220Ωにしましたが、抵抗値を低くすれば音が大きくなります。ただし消費電流も増えます。この回路は電源電圧が1.5Vでも動作しますが、その場合はR4を100Ωくらいにしたほうが良いと思います。電源電圧を1.5Vに下げると発振周波数は620Hzに下がりました。逆に電源電圧を4.5Vに上げると、周波数は690Hzになりました。

第2図
C1C2R2R3周波数
0.1μ0.1μ10k10k810Hz
0.1μ0.1μ4.7k4.7k2000Hz
0.047μ0.047μ10k10k1700Hz
0.1μ0.1μ4.7k10k1000Hz
0.1μ0.1μ10k4.7k1520Hz
0.047μ0.1μ10k10k960Hz
0.1μ0.047μ10k10k1460Hz

 第2図は、R1を10kΩに変えた以外は第1図と同じです。第1図の回路の平均消費電流は14mAですが、第2図の回路では8.8mAに減ります。スピーカーから出る音量はほとんど変わりませんので、こちらの方が実用的だと思います。
 ただし、R1とR4の大きさに差があるためか、CR定数を変えたときの発振周波数の変化のしかたは上の表のように複雑です。
 この回路のブレッドボード上の配線図と試作写真を下に示します。

実体図2 写真2

第3図,第4図

 第3図はスピーカーをエミッタ側につないだものです。これでも同じように動作します。発振周波数は840Hzになりました。
 第4図は出力トランスを用いた回路です。消費電流が2.6mAに減りました。発振周波数は610Hzです。スピーカー単体のときより大きな音が出るので、R4を大きくすることができます。

第5図,第6図

 第5図は圧電スピーカーを鳴らす回路です。発振周波数は670Hz、消費電流はわずか0.45mAです。これくらいの周波数なら、8Ωスピーカーとそれほど変わらない音量で鳴ります。
 第6図のように圧電スピーカーをTR2のコレクタ-エミッタ間につないでも同じです。音量、周波数とも変化はありません。

第7図

 第7図は別のトランジスタを使ってスピーカーを鳴らす回路です。発振周波数は730Hzになりました。R5を小さくするほど音が大きくなりますが、消費電流が増え、また発振周波数も少し高くなります。

第8図

 第8図はTR3をPNPトランジスタに換えたものです。同じように動作します。

第9図

 第9図はコンデンサで直流をカットするタイプです。発振周波数は700Hzでした。R5を小さくすると音が大きくなり、発振周波数が少し高くなります。

第10図

 第10図はR2の一部をボリュームに換えて周波数を連続可変する回路です。図の定数で480Hzから1990Hzまで変化しました。

第11図

 第11図はバリコンを用いて周波数を調節する回路です。中波ラジオ用の単連ポリバリコンを使用しました。510Hzから1730Hzまで変化させることができますが、なぜか濁った音になります。
 C1を取ってバリコンだけにすると発振周波数の上限が5kHzくらいになります。しかし、バリコンの容量の小さいところでは発振が停止してしまいます。

第12図

 第12図は雑誌「トランジスタ技術」の初心者向けページに載っていた断続音の電子ブザーです。
 TR1とTR2は数Hzの低い周波数を発振するマルチバイブレータです。一方TR4からTR6は数百Hzを発振する普通の電子ブザーで、第8図と同じです。TR2の出力によりTR3がオンになったりオフになったりするので、電子ブザーも断続して「ピーピーピー」という音が出ます。図の定数で1秒間に3回ほど断続しました。

第13図

 第13図も「トランジスタ技術」に載っていたもので、救急車のサイレンに似た「ピーポー」という音を出す回路です。
 回路の右半分は第12図と同じです。この部分で約820Hzを発振してスピーカーを鳴らします。これが「ピー」の音になります。一方、TR1とTR2からなる発振回路は約2秒の周期で発振しています。そのためTR3は1秒ごとにオンになったりオフになったりします。TR3がオンになると、R6の一端が電源のプラスにつながります。つまりR6とR9が並列になって抵抗値が低くなるので、周波数も下がって「ポー」の音(約650Hz)が出ます。
 この回路のボード上の配線図と写真は下記の通りです。

実体図13 写真13

第14図

 第14図は「アメパト・サイレン」です。「ヒュンヒュン」といった感じの音が出ます。これも「トランジスタ技術」から引っぱってきたものですが、1970年代の「ラジオの製作」にもほとんど同じ回路が出ていますので、昔からあるものなのでしょう。
 TR1とTR2からなる発振回路の動作はよくわかりませんが、記事の説明によると「のこぎり波」を発生させる回路だそうです。これにより、マルチバイブレータを構成するトランジスタのベース電圧が連続的に変化するので、発振周波数が揺さぶられて「ヒュンヒュン」という音になります。
 この回路のボード上の配線図と写真は下記の通りです。

実体図14 写真14