ブレッドボードラジオ発振回路

コルピッツ発振回路

 トランジスタ1石のコルピッツ型発振回路について実験しました。1個のコイルと2個のコンデンサから成るLC同調型の発振回路です。「コルピッツ発振回路」という名前は、この回路の考案者 Edwin Henry Colpitts に由来しています。なお、ハートレー発振回路もハートレーさん (Ralph Vinton Lyon Hartley) が発明したのでそう呼ばれています。また、反結合発振回路は「アームストロング発振回路」と呼ばれることがありますが、これは再生検波やスーパーヘテロダインを発明した Edwin Howard Armstrong にちなんだものです。

1. 基本回路

 図1

 上は「絵ときトランジスタ回路」(オーム社) に載っているハートレー型とコルピッツ型の基本回路です。両者は、コイルとコンデンサの位置を入れ替えたような関係です。コルピッツ発振回路では2個のコンデンサの直列合成容量とコイルのインダクタンスによって発振周波数が決まります。ここでは、前に実験したハートレー発振回路を変形する方法でコルピッツ発振回路を作ってみました。

2. コンデンサによる交流電圧の分割

 ハートレー発振回路ではコイルに中間タップを設けて増幅器の出力の一部を入力に戻します。これに対しコルピッツ発振回路ではコイルに生じた電圧を2個のコンデンサで分圧して入力側に戻しているように見えます。コンデンサで電圧を分割するとはどういうことでしょうか。これについて少し考えてみます。

 図2

 上の図2はコイルのタップによる交流電圧の分割を示したものです。コイルの巻数は100回で、下から10回目のところにタップが出ています。これに1Vの交流電圧を加えます。図Aはコイルの一番下を基準点にした場合で、1番端子と2番端子には同位相の電圧が出てきます。巻数比が10:1なので電圧の振幅も10:1になります。図Bは中間タップを基準点にした場合で、こうすると1番と2番に巻数比に応じた逆位相の電圧が出ます (波形の山と谷が逆になる)。

 図3

 図3は2個のコンデンサによる交流電圧の分割です。交流に対するコンデンサの抵抗 (リアクタンス) は静電容量に反比例します。つまり、周波数が同じなら、静電容量が大きいほど抵抗値は小さくなります。ゆえに、2個のコンデンサを直列にした場合、容量の小さい方に高い電圧が発生します。ここでは先のコイルの例に合わせて、C1とC2の容量比を1:9にしました。コイルを中間タップで分割するケースと同じように考えると、同位相の場合は図A、逆位相の場合は図Bのようになります。・・・・たぶんなるんじゃないかなあ。実際の回路ではなかなか計算通りにはいきませんが。

3. ハートレー発振回路からコルピッツ発振回路へ

 図4

 図4Aはエミッタ接地型のハートレー発振回路です。これをコルピッツ型に変形すると図Bのようになりますが、これではトランジスタに電流が流れません。そこで、直流は通すが高周波は通さない部品、高周波チョークコイル (RFC) を入れることにします。RFCのつなぎ方は図Cと図Dの2通り考えられます。2個のコンデンサの接続点はアースにつなぎました。

 ベース接地型とコレクタ接地型についても同様に変形してみました。これらはコイルとコンデンサの位置を入れ替えるだけでうまくいきそうです。

 図5

 図6

 以下、3種類のコルピッツ発振回路の実験結果を記します。発振コイルは7mm角の中波スーパー用OSCコイル、トランジスタは2SC1815Y、電源はDC6Vで、一連のLC同調発振回路の実験と同じです。コルピッツ発振回路というとVHF帯の発振器というイメージがありますが、今回実験したのは中波帯の周波数の発振回路です。

4. エミッタ接地型コルピッツ発振回路

 図7

 図7はエミッタ接地型のコルピッツ発振回路です。トランジスタのコレクタと電源プラス間にRFC (L2) を入れました。先の図4Dの回路です。RFCは470μHにしました。数mHくらいでも動作しますが、出力電圧は少し小さくなります。発振周波数によって最適値を選ぶ必要がありそうです。図4Cのタイプも問題なく動作しました。

 C1とC2の比率は広範囲に選べるようですが、OSCコイルのタップが10分の1くらいの所から出ていると思うので、それと合わせる意味でC2をC1の10倍にしました。C1=C2でも、C1>C2でもちゃんと発振しました。ただC1>C2のときは、あまり差がありすぎると波形が悪くなったり異常発振したりするようです。

 C3は100pFにしました。C3が大きいと波形の下側が少し詰まります。小さすぎると発振しません。消費電流は発振しているとき0.07mA、コイルをショートして発振を止めると0.06mAでした。この回路のブレッドボード上の配線図と試作写真を下に掲げます。

実体図7 写真7

 図8

 図8はFET・2SK241Yを用いたソース接地型のコルピッツ発振回路です。ラジオ雑誌でこれと似た回路のディップメーターの記事を見たので試してみました。RFC (L2) を1mH以上に大きくしたり、ソース抵抗R2を小さくしたりすると波形の下側が歪みます。C3は0.01μFでも大丈夫です。電流は発振時0.10mA、オフ時0.09mAでした。

 この回路のブレッドボード上の配線図と試作写真を下に掲げます。

実体図8 写真8

5. ベース接地型コルピッツ発振回路

 図9

 図9はベース接地型コルピッツ発振回路です。これは図5の回路のままですんなりうまくいきました。ただ周波数がだいぶ低くなりました。ブレッドボード配線図と写真を下に掲げます。

実体図9 写真9

 図10

 図10もベース接地型コルピッツ発振回路ですが、C4の片側を電源プラスからマイナスへ移したものです。雑誌の製作記事で見かけるFMワイヤレスマイクの多くはこの形が基本になっているようです。図9と同じ回路定数にすると波形の下側が少しつぶれるので、R1を大きくしてコレクタ電流を減らしました (まだちょっと歪んでいますが)。C4がエミッタのバイパスコンデンサになるので、部品が1個減らせます。全電流は発振時0.07mA、停止時0.04mAです。ブレッドボード配線図と写真を下に掲げます。

実体図10 写真10

6. コレクタ接地型コルピッツ発振回路

 図11

 図11はコレクタ接地型コルピッツ発振回路です。帰還回路に抵抗R4を入れないと少しいびつな波形になります。電流は図の定数で発振時0.79mA、停止時0.33mAですが、多少増減させても動作には影響ありません。ブレッドボード上の配線図と試作写真を下に示します。

実体図11 写真11