ブレッドボードラジオ発振回路

同調型反結合発振回路

 同調型反結合発振回路について実験しました。コイルとコンデンサによる共振回路を持った正弦波の発振回路です。教科書には必ず登場するものですが、具体的な回路例はあまり見かけないので、とりあえず実際に動く回路にするまでにけっこう手間取りました。

1. 教科書に載っている図

 図01

 上は「絵ときトランジスタ回路」(オーム社) という本に載っていた同調型反結合発振回路の回路図です。同調回路をどこに置くかによって3種類の回路があると書かれています。こういう図は他の本でもよく見かけます。たいていは、この図に続いて数式を使った動作理論の説明があるのですが、私には難しくて理解できないし、上の原理図と実際の回路を結びつけることもできません。

 そこで、アプローチの仕方を変えて、トランス結合の増幅回路を変形させて発振回路を作ってみることにしました。エミッタ接地増幅回路、ベース接地増幅回路、コレクタ接地増幅回路のそれぞれについて2種類、全部で6種類の回路が考えられます。以下、ひとつずつ実験した結果を記します。一応発振はするものの、きれいな波形を出すのはなかなか大変です。

 図02

2. エミッタ接地タイプ

 図1

 まず、最もよく使われるエミッタ接地増幅回路をもとに考えてみました。上の図1Aはトランス結合のエミッタ接地増幅回路です。入力側・出力側ともにコイルになっている高周波増幅回路のようなものを想定します。これの入力と出力を結合させると図Bのようになり、ここで正帰還が起きれば回路は発振するはずです。エミッタ接地増幅回路では入力と出力は位相が逆になります。つまり図中に示したように、ベース側がプラスのときはコレクタ側がマイナスになります。なので正帰還させるためにはコイルの極性を反対にする必要があります。

 つぎに、コイルのコレクタ側もしくはベース側のどちらかにコンデンサをつないで同調回路にします。コレクタ側にコンデンサを入れると図Cのコレクタ同調型、ベース側にコンデンサを入れると図Dのベース同調型になります。あとはコイルの巻数比やコレクタ電流を調整すればうまくいきそうです。

 図2

 図2は今回実験したエミッタ接地型コレクタ同調発振回路です。コイルはAMスーパーラジオ用のOSCコイル (7mm角のもの) を用いました。このページの発振回路はすべてこのコイルを使っています。トランジスタは2SC1815Y (hFEは約150) 電源電圧はDC6Vで、これもすべての回路に共通です。

 図右に発振出力をオシロスコープで見た図を掲げます。コイルの一次側 (同調コンデンサが付いている方) と二次側 (巻数の少ない方) の両方にプローブをつないで出力を観測しました。出力1 (黄色) の電圧は12Vp-pで、電源電圧の2倍になっています。出力2 (赤) は1.32Vp-pでこちらはずっと低い電圧になります (波形図の出力1と出力2は縦軸のスケールが違います)。周波数は698kHzですが、出力1にオシロをつなぐと、プローブの容量の影響で周波数が少し下がるようです。

 波形は下側が少しつぶれています。出力2は反転しているので逆に上側がつぶれています。回路定数をいろいろいじってみましたが、これより良くなりませんでした。最初、コレクタ電流を1mA程度にして実験したのですが、そうすると下側がばっさり切り取られたような波形になってしまいます。電流を減らしていくとだんだん下側が伸びてまともな波形に近づきます。全電流は発振しているとき0.05mA、C3をショートして発振を止めると0.03mAとごくわずかです。

 下に、ブレッドボード上の配線図と試作写真を掲げます。

実体図2 写真2

 図3

 図3はバイアス回路を簡単にしたもので、これでも同じように動作しました。周波数、出力電圧とも図2とほとんど同じです。ただし、温度変化の影響を受けるかもしれません。エミッタ抵抗R2まで省いてしまうとブロッキング発振のようになります。図Bはコイルを経由してバイアスをかけるもので、これもOKでした。この手のバリエーションはいろいろ考えられますが、今回はとりあえず発振させるのが目標なので、あまり深入りしませんでした。

 図4

 図4は同調回路をベース側 (入力側) に持ってきた回路です。まあまあきれいな波形になっていると思いますがどうでしょう。ベースはインピーダンスが低いのでコイルをタップダウンしました。一番上のところからベースにつなぐといびつな波形になります。また、直列抵抗R1を入れないと波の途中にギザギサが出ます。全電流は発振しているとき0.92mA、発振していないとき0.87mAでした。

実体図4 写真4

3. ベース接地タイプ

 図5

 図5はL結合のベース接地増幅回路から同調型発振回路への変化です。ベース接地ではエミッタが入力、コレクタが出力で、入力と出力は同位相です。したがってコイルの向きも同じにします。反結合発振回路の「反結合」とは「出力を反転して入力に結合する」という意味ではないかと思うのですが、上のように反転しない場合も反結合発振というのでしょうか。コレクタ同調型とエミッタ同調型の2種類を試してみました。

 図6

 図6はベース接地型コレクタ同調発振回路です。図2 (エミッタ接地型コレクタ同調発振回路) と同じく、波形の下側が少し詰まっています。コレクタ電流を大きくするともっとつぶれた波形になります。エミッタとコレクタは同位相なので、出力1も出力2も同じ形をしています。発振周波数は706kHz、電流は発振時0.07mA、オフ時0.05mAでした。ブレッドボード配線図と写真を下に示します。

実体図6 写真6

 図7

 この回路もバイアス抵抗2本でやってみたところ、同じように動作しました。波形がつぶれるのも同じです。Bの回路はエミッタ回路の配線が違います。これでも発振しますが、周波数が細かく変動して少し不安定です。

 図8

 図8はベース接地型エミッタ同調発振回路です。アース側に近いタップをエミッタにつなぎました。きれいな波形にするためには、コイルとエミッタの間に50〜100Ω程度の抵抗が必要です。発振周波数は756kHz、発振時の電流は0.96mA、発振していないときの電流は0.87mAでした。ブレッドボード上の配線図と試作写真を下に掲げます。

実体図8 写真8

4. コレクタ接地タイプ

 図9

 コレクタ接地増幅回路はベースが入力、エミッタが出力で、入力と出力は同位相です。エミッタ同調型とベース同調型の2種類の発振回路を実験しました。

 図10

 図10はコレクタ接地型エミッタ同調発振回路です。これはすんなりうまくいきました。発振周波数は756kHz、電流は発振時1.18mA、オフ時0.87mAです。ブレッドボード配線図と写真を下に示します。

実体図10 写真10

 図11

 図11はコレクタ接地型ベース同調発振回路です。ベースはコイルの上端につなぎました。タップにつなぐと発振しません。また、コレクタ電流を減らし、C2も小さくしないときれいな波形が得られませんでした。でも上の波形図でもまだ歪が見られますね。発振周波数は704kHz、電流は発振時0.56mA、オフ時0.34mAでした。ブレッドボード配線図と写真は下記の通りです。

実体図11 写真11