ブレッドボードラジオ発振回路の実験

トランジスタのコレクタ・エミッタ逆接続の実験

 トランジスタの3本の足には極性があります。NPNトランジスタの場合、コレクタをプラス、エミッタをマイナスにするのが常識です。ところが「エレ工房さくらい」のホームページに、コレクタにマイナス、エミッタにプラスの電圧をかけて発光ダイオード(LED)を点滅させる回路が載っていたので、ちょっと実験してみました。
 最初にお断りしておきますが、さくらいさんのページには「こういう使い方をするとトランジスタが劣化するおそれがあるので、1個だめにしてもよいという覚悟の下で実験してください」との注意書きがあります。

第1図
VinVeIeVinVeIe
8.008.00012.07.480.45
9.008.280.0713.07.340.56
10.07.970.2014.07.230.68
11.07.670.3315.07.130.79

実験結果のグラフ

 LED点滅回路を試作する前に、そもそもコレクタ・エミッタ間に逆電圧を加えると何が起きるのか調べてみました。上の第1図の回路で電源電圧Vinを少しずつ上げていったときエミッタ電圧Veとエミッタ電流Ieがどう変化するか調べた結果が上右の表と左のグラフです。VinとVeの単位はDCV、Ieの単位はDCmAです。

 エミッタ電圧Ve(エミッタ・コレクタ間の電圧)が8V以下ではまったく電流が流れません。しかし8Vを超えると電流が流れ始め、その後電源電圧Vinが上がるにつれてエミッタ電流Ieはどんどん増加します。一方エミッタ電圧は約8.3Vをピークに少しずつ下がっていきますが、エミッタ電流の増え方に比べてエミッタ電圧の変化はわずかです。このように、ある一定の電圧になると電流が流れ始め、電流が流れ始めると電圧がちょっとだけ下がってあとはほぼ一定、という所がポイントらしいです。

第2図

 第2図の1に示した回路がさくらいさんのサイトに出ているLED点滅回路です。コンデンサCが並列に入ることで周波数の低い発振回路を形成しています。上記の定数で、LEDがほぼ1秒に1回点滅(フラッシュ)しました。トランジスタのエミッタ・コレクタ間の電圧を測ってみると、LEDの点滅に合わせて7.4Vと8.2Vの間を往復していました。電源から流れる電流も点滅に合わせて増減します。最大で1mAくらいです。
 コンデンサCを小さくすると点滅周期が短くなります。点滅周期を短くするほどLEDは暗くなります。抵抗Rを小さくしても点滅が早くなりますが、LEDの明るさは変わりません。ただし消費電流は増加します。

 私の実験回路ではトランジスタに2SC1815Yを使用し、エミッタ・コレクタ間が8V前後になりましたが、オリジナルの回路ではトランジスタに2SC946が使われており、エミッタ・コレクタ間電圧は7Vと説明されています。トランジスタの品種によってオンになる電圧が違うのかもしれません。
 第2図の2のように、トランジスタのコレクタ側にLEDを入れても同じように動作しました。
 第2図1の回路のブレッドボード上の配線図と写真を下に示します。

実体図 写真

第3図

 第3図は発振周波数を上げて電子ブザーとして動作させる実験です。
 LED点滅回路のコンデンサを1μFにすると、LEDはうっすらと連続点灯するようになります。このとき、LEDの両端に圧電スピーカーをつなぐと、「プー」という音が出ました。あまりきれいな音ではありません。デジタルテスタの周波数測定レンジで測定すると、約750Hzで発振していました(第3図1)。コンデンサを2.2μFにすると周波数は300Hzに下がりました。発振周波数はコンデンサの容量に反比例するようです。

 第3図の2は、電子ブザー専用の回路にしたものです。圧電スピーカーは抵抗の両端に接続しました。周波数は約400Hz、消費電流は1.1mAです。

 第3図の3は、トランジスタのベース・エミッタ間に抵抗をつないでバイアス?をかけてみたものです。抵抗が大きいほど発振周波数が低くなるので、一部をボリュームに変えて調節できるようにしました。1MΩのボリュームが最大のとき510Hz、ゼロのとき920Hzを発振します。VRとR1の合計を220kΩより小さくすると音が出なくなります。消費電流はボリュームが最大のとき約1.2mA、ゼロのとき1.3mAでした。

 第3図3の回路のブレッドボード上の配線図と写真を下に示します。

実体図 写真

 (2005年7月2日)