ブレッドボードラジオメーカー品ラジオ

アナログテスタ カイセ SK−300

 私がいつも使っているカイセSK-300というアナログテスタについて、付属の回路図を参考に測定の仕組みを調べてみました。

1. 外観と仕様

テスタの写真

 上の写真がカイセSK-300というアナログテスタです。右側は裏ブタを外した内部の写真です。サイズは幅88mm、高さ134mm、厚さ30mm、重量は230g、価格は3580円でした。
 説明書によると、このテスタの仕様は下記の通りです。

2. 全体の回路図

第1図

 上がテスタの取扱説明書に載っていた回路図です。できるだけ元の表記に近い形で書きました。安物のテスタでもけっこう複雑ですね。
 この回路図を見てまず戸惑ったのがロータリースイッチの部分です。こういう書き方は初めて見たので、最初はどことどこがつながるのかさっぱりわかりませんでした。さんざん考えたあげく、下の図のように切り替わるらしいということがわかりました。

第2図

3. 各レンジごとの回路図

 第3図は各レンジ別の回路図です。ロータリースイッチの部分は見慣れた形に直しました。これで少し見やすくなりました。

 (訂正。抵抗測定レンジの回路で電池の向きが逆になっていたので直しました。ご指摘くださったKさん、ありがとうございます。2007年9月30日)

第3図

4. メーターの内部抵抗

 メーター周りのごちゃごちゃした部分について考えてみました。第3図のレンジ別回路図を見ると、ACVレンジを除く他のレンジではメーター周りは同じなので、まずこれについて調べました。

第4図

 第4図はテスタのレンジをDC0.3V/60μA(共用)にしたときの回路です。測定端子と並列に入る4本の抵抗は合計で約30kΩになります。メーター保護用のダイオードなどを除いて書き直したのが下の第5図です。

第5図

 0.3Vレンジと60μAレンジが共用になっているということは、測定端子間に0.3Vの電圧を加えると回路全体で60μAの電流が流れ、メーターがいっぱいに振れるということです。したがって、回路の各部分には図に示したような電流が流れます。
 ここで、37.5kΩより右側の部分を1個の電流計と考えると、0.3Vで50μA流れるわけですから、内部抵抗は 0.3V÷50μA=6kΩ であることがわかります。
 つまり、下の第6図のように、この部分全体でフルスケール50μA、内部抵抗6kΩのメーターとして動作します。このことはACVレンジを除くすべてのレンジに共通です。

第6図

5. ACV測定時のメーター回路

 ACV(交流電圧)測定レンジだけは、他のレンジとメーター周りの回路が違います。AC12VレンジとDC12Vレンジの回路を比較しながら、ACV測定の仕組みについて考えてみました。

第7図

 第7図はDC12VとAC12Vの測定回路の比較です。必要なものだけ抜き出して書いてあります。DCとACではメーター周辺の回路が違います。またACV測定時はDC測定時の半分の値の直列抵抗と整流ダイオード(ゲルマニウム)が入ります。
 なお、第3図を見るとOA90のアノード側に1S1588(シリコンダイオード)がつながっていますが、これはOA90の保護用(逆電圧をショートする)で、測定には関与しません。よって整流方式は半波整流です。

第8図

 第8図はDCV測定時のメーター回路です。前に書いたように、この回路は0.3Vの電圧をかけると全体で50μAの電流が流れ、メーターがいっぱいに振れます。
 4.63kΩ+VR3k+メーターの部分には42μA流れますから、三者の抵抗値の合計は 0.3V÷42μA=7.143kΩ です。したがって、VR3kとメーターの合成抵抗は 7.143kΩ−4.63kΩ=2.513kΩ ということになります。
 こうして求めた抵抗値をAC12V測定回路にあてはめると下の第9図のようになります。

第9図

 メーターのフルスケールは42μA、内部抵抗は2.513kΩなので、メーターがいっぱいに振れているとき、図のメーター両端の電圧は 42μA×2.513kΩ=0.106V です。一方、42.13kΩには 0.106V÷42.13kΩ=2.52μA 流れるので、回路全体の電流は 42μA+2.52μA=44.52μA です。

 さて、これは本で読んだ知識なんですが、テスタに使われているメーター(可動コイル型メーター)は、交流の平均値に比例した振れを示します。テスタではこれを実効値に直して表示しているそうです。
 正弦波の場合、平均値は最大値の63.6%、実効値は最大値の70.7%なので、平均値は実効値の90%になります。AC12Vレンジの12Vというのは実効値ですから、これを平均値に直すと 12V×90%=10.8V、半波整流ですから0.5を掛けると5.4Vという数字が出てきます。
 このことから、第9図の回路にAC12V(実効値)を加えた状態とDC5.4Vを加えた状態は同じ結果、つまりどちらもメーターがフルスケールまで振れるのではないかと考えました。
 そこで実際にAC12Vレンジにセットしたテスタの測定端子にDC5.4Vを加える実験をしました。

第10図

 第10図がその実験回路です。9Vの電池(006P)の電圧をボリュームで分圧してテスタに5.4Vを加えたところ、予想通り、メーターがぴったり右端まで振れました。

第11図

 AC12VレンジのテスタにDC5.4Vを加えたときの各部分の電圧と電流は第11図のようになります。整流ダイオードのアノード側の電圧は 5.4V−(117kΩ×44.52μA)=0.191V です。ダイオードのカソード側の電圧は第9図でみた通り0.106Vですので、ダイオードでの電圧降下は 0.191V−0.106V=0.085V と求められます。
 DCV測定とACV測定でメーター周りの回路が違うのは、整流ダイオードの電圧降下、および平均値と実効値の違いによる誤差を補償するためではないでしょうか。電圧レンジを設定するための直列抵抗値がDCの半分なのは、半波整流で電圧が半分になる(メーターの感度も半分になる)からだと思います。

 以上、自分なりに考えてわかったことをまとめてみましたが、果たしてこれで正しいのか自信がありません。今後間違いに気づいたらその都度訂正していくことにします。