ブレッドボードラジオトランジスタラジオ

再生検波1石ラジオ

 前に作ったFET検波1石ラジオに再生をかけてみました。調節箇所が同調バリコンと再生バリコンの2ヵ所になるので操作はやや面倒ですが、これまで実験した1石ラジオの中では最高の性能だと思います。

1. ドレイン側から再生をかける

回路図1

 以前、真空管のプレート検波をFETに置き換えた形の1石ラジオがうまくいったので、今回も再生回路は真空管と同じ形にしてみました。回路は第1図(左側)の通りです。
 このラジオはバーアンテナだけでもローカル局は十分な音量で受信できます。短いワイヤアンテナをつなぐと夜間には遠距離局がたくさんキャッチできました。感度は1石レフレックスと同じくらいだと思いますが、特筆すべきは選択度の良さです。

 当地のローカル局は1107, 1224, 1386kHzの3局で、バンドの上半分に片寄っています。1石レフレックスではローカル局の混信のため、遠距離局は中波バンドの下半分でしか聞くことができませんでした。しかし再生検波1石ラジオでは、ダイヤル上でローカル局とローカル局の間にだいぶ「すき間」ができるので、中波の上半分においても遠距離局を実用的に受信することができます。

 再生バリコン(VC2・150pF)は、AMスーパー用2連ポリバリコンのアンテナ側を使いました。羽根が30〜40%くらい入ったところ(容量で言うと50pF前後)で再生発振が起きます。真空管と同様に、周波数が高いほど小さな容量で再生がかかるようになりますが、バンドの上端と下端での再生容量(再生発振が起きる時点の再生バリコンの容量)の差は、真空管のときほど大きくありません。

 RFC(L2)の前にC2というコンデンサが付いていますが、これがないと再生バリコンを最小にしても発振しっぱなしになってしまいます。また、真空管のプレート検波に再生をかけたときと同じく、再生発振状態になると「キュー」という大きな音が出て耳障りです。

 なお、第1図の右側に示したように、FETのドレインとRFCの間に直列に再生コイルを入れても同じように動作しました。

 ボード上の結線図と完成写真は下記の通りです。

実体配線図1 写真1

2. ソース側から再生をかける

回路図2

 第2図左側は、FETのソース側から再生をかけたものです。ドレイン〜アース間にバリコンを入れて再生量を調節します。
 感度や選択度は第1図の回路とほぼ同じですが、再生がかかりやすくなるようで、バンドの上端では再生バリコンの羽根をほんの少し入れただけで発振してしまいます。そのため高い周波数では再生調節がやりにくいです。再生バリコンを2連バリコンのOSC側(最大容量65pF)にかえても、あまり改善は見られませんでした。一方、この回路では再生発振が起きても第1図のような耳障りなノイズは出ません。

 余談ですが、一連の1石ラジオの実験では、同調バリコン(VC1)として、科学教材社のゲルマラジオキットに付いていた単連ポリバリコンを使用しています。私の持っているものだけがたまたまそうなのかもしれませんが、このバリコンは、つまみを回して特定の周波数に合わせたあと手を離すと、ほんのわずかですがシャフトが逆戻りしてしまいます。普通の1石ラジオなら特に不都合は感じませんが、再生検波のように選択度の良いラジオで高い周波数の局を聞くときはちょっと気になります。

 なお、第2図の右側に示したように、バーアンテナの一次コイルの中間タップ(5番端子)を使って再生をかけても、同じように聞こえました。

 ボード上の配線と完成写真は下記のとおりです。

実体配線図2 写真2

3. 短波ラジオ

回路図3

 第3図は、第1図のラジオを短波用に変えたものです。同調コイルにFCZ7MHzを用い、2mのワイヤアンテナをつないだ状態で4.8〜18.0MHzが受信できます。いつもは短波ラジオ用にFCZ9MHzを使うのですが、これだと低い周波数で十分に再生がかからなかったので、今回は7MHz用コイルにしました。

 再生検波の選択度の良さは短波帯でも実感できます。前に作ったFETによる高周波増幅1石短波ラジオでは、同じメーターバンド内の局は全部いっしょくたに聞こえていました。しかし再生をかけると、特別に強い局を除いて、100kHzも離れれば混信はほとんど気にならなくなります。同調がシャープになる分、ハイバンドではチューニングがかなり微妙なので、スプレッドバリコンが欲しくなります。
 感度も若干アップしたように感じますが、短波は日によって電波の強さが違うので正確な比較はできません。アンテナを長くすると感度が上がりますが、その分混信も増えます。本機では、2m前後のアンテナでちょうど感度と選択度のバランスが取れるように思います。

 中波の場合と同じく、このラジオでも再生発振の状態に入ると「ビィ〜」と大きなノイズが出てしまいます。中波では静かだった第2図の回路の短波版も試してみましたが、やはりノイズが出てしまいました。また、再生ツマミには少しボディエフェクトを生じるので、ノイズが出る直前の状態で止めておくのはなかなか大変です。もっとも、実際の受信ではそこまでぎりぎりにしなくてもけっこう聞こえます。

 ボード上の配線と完成写真を下に示します。

実体配線図3 写真3

 少し古いラジオ雑誌にはFETによる再生検波ラジオの製作記事が何例か登場します。それらはいずれも電源電圧が9V前後で、FETにかける電圧をボリュームで可変することによって再生を調節するものでした。
 今回はそういうタイプの回路も実験してみたのですが、どうも感度が悪くてパッとしません。逆に、雑誌では見かけないバリコンによる再生調節の方がうまくいきました。

 (2004年12月5日)