ブレッドボードラジオその他の実験と製作

オルゴールIC・UM66T

 UM66Tシリーズは、トランジスタと同じ形をした3本足の安価なオルゴールICです。このICの基本的な動作について少し調べてみましたので報告します。
 はじめにお断りしておきますが、私がこのICについて知っているのは下の「基本回路」だけです。詳しい定格などは何もわかりませんので、以下の実験ではICに無理がかかっている場合があるかもしれません。

第1図

 第1図がこのICを動作させるための基本回路です。「エレ工房さくらい」のホームページに出ていました。電池とスピーカーをつなげばすぐ鳴る便利なICです。UM66Tシリーズは何種類もあって、それぞれ決まった曲目が1曲だけ入っています。私が持っているのは「ラブミーテンダー(UM66T-11)」と、ディズニーの「スモールワールド(UM66T-68)」の2種類です。
 第1図の回路でスイッチを入れると同時に鳴り出します。1コーラスの長さは30数秒で、終わるとすぐまた最初から演奏を繰り返します。曲の途中でスイッチを切って入れ直しても、つねに曲の頭から演奏を始めます。音質はいわゆる電子音で、本物のオルゴールのような情緒はありません。

 電源電圧を変えたときの消費電流と、1コーラスの演奏時間を調べてみました。結果は下の表の通りです。

電源電圧1.0V1.5V2.0V2.5V3.0V
消費電流0.01mA0.03mA0.04mA0.06mA0.1mA
ラブミーテンダー40秒34秒34秒35秒36秒
スモールワールド40秒32秒32秒33秒34秒

 消費電流は細かく変動するので、上記はおおよその値です。音が出ていない時は少なく、また音程が低いほど電流は少なくなります。
 電源電圧は1.2V以上あればほぼ正常に動作します。それ以下になるとだんだんテンポが遅くなり、キイも下がってきます。1V以下では正常な音程を保てなくなってしまいます。反対に、電圧を1.5Vより高くしてもテンポは変化しません。ただ、3Vに近くなると少しだけ遅くなります。

 ところで、上の表でおわかりのように、「スモールワールド」の方が演奏時間が2秒ほど短くなっています。1拍のテンポはほとんど同じなのに少し早く終わります。細かく調べてみると、「ラブミーテンダー」は1コーラスが四分音符にして64拍なのに、「スモールワールド」は62拍しかありませんでした。曲の途中でちょっとつんのめったようになる部分があります。プログラムの不具合でしょうか。

第2図

 第2図は、出力端子にいろいろなものをつないで音の出かたを比較した実験です。
 1番は圧電スピーカーをつないだ場合で、第1図と同じです。圧電スピーカーというのは、クリスタルイヤホン(セラミックイヤホン)と同じ原理を応用した発音体です。私の手元には直径が12mmのものと30mmのものと大小2種類ありますが、やはり大きなものの方が音量も大きく、音質も優れています。小さい圧電スピーカーは低音が出ないので、文字通り蚊の鳴くような音です。
 2番はクリスタルイヤホンを接続したものです。直接つなぐと音が大きすぎるので、100kΩの抵抗を入れました。これでちょうど良い音量になります。音程が変わるたびに出る「ポコ」という音が耳に付いて、あまり聞きやすいとは言えません。
 3番は8Ωのスピーカーをつないだものです。ICの出力端子に直結しても問題ないようですが、ちょっと気持ち悪いので間にコンデンサを入れました。音量は圧電スピーカー(大)と同じくらいです。でも音が柔らかくなって聞きやすくなります。消費電流は圧電スピーカーに比べて10倍以上に増えます。ICに負担がかかるかもしれません。
 4番は出力トランス経由で8Ωスピーカーを接続したケースです。3番よりもずっと大きな音が出ます。消費電流は3番の半分くらいです。

第3図

 第3図はICの出力をトランジスタで増幅して8Ωのスピーカーを鳴らす回路です。
 1番はトランジスタのコレクタ側にスピーカーをつないだ回路、2番はエミッタ側にスピーカーをつないだ回路です。どちらでも同じように動作しました。音量は第2図の4番(出力トランス経由)とほぼ同じですが、バイアス抵抗を小さくすればもっと大きな音が出ます。音質は、出力トランスを用いた場合より少し硬い感じです。

 (2005年1月4日)