10進カウンタ⁄デコーダICの74HC4017を使って電子ルーレットの実験をしました。最初、前項からの流れでクロック発振器にシュミットNANDゲートの74HC132を使って実験を始めたのですが、ルーレットらしい動きにするには、オーソドックスにタイマーIC・555を使った方がよさそうです。でもなかなか思うような動作にできません。
上の回路は、前項でやったLED10個の順次点滅回路にスイッチとコンデンサによる放電式のタイマーを付けたものです。スタートスイッチSW1をチョンと押すとLEDが点滅を開始し、約1.9秒後に自動的に止まってどれか1個のLEDだけが点灯した状態になります。
電源オン直後はLEDが1個だけ点いた状態で静止しています。スイッチを押すとIC1dの12番端子がHになって発振が始まり、LEDが順次点滅します。この回路は発振周波数が120Hzなので、順次点滅といっても全体がチラチラ光って見えます。スイッチから手を放すとコンデンサC2から抵抗R1を通って徐々に放電するので12番端子の電圧もしだいに下がります。端子電圧が3Vくらいになると発振が止まり、その時点で光っていたLEDだけが点灯した状態で点滅がストップします。
パワーオンリセットは必要ないと思ったので付けませんでした。また、今回は動作確認のためにLEDをQ0から順に並べてありますが、ルーレット遊びが目的ならわざとバラバラに並べるのも面白いと思います。雑誌の製作記事ではLEDが円形に並んでいるのをよく見かけます。
R2とR3 (ともに1kΩ) はICを保護するために入れたものですが、この回路では必要ないかもしれません。本に出ている同種の回路を見ても抵抗が入っているものといないものがあります。でもICが壊れてから後悔しても遅いので、どういうときに保護抵抗が必要なのかはっきりするまでは入れておくことにします。
C1とC4 (0.1μF) は電源ラインのバイパスコンデンサです。このページの回路はすべてこれらのコンデンサが入っています。回路にもよりますが、パスコンがないとルーレットの目の出方に偏りが生じることがありました。上の回路でも数十回試行して目の出方を調べると多少の偏りがあります。しかし時間をおいてもう一度やってみると少し違った結果になるので、これは偶然なのかもしれません。タイマー回路と発振回路の間に余ったNANDゲートを2個直列に入れてバッファにした回路も試しましたが、上の回路との違いがわかりませんでした。
ブレッドボードの配線図と試作写真を下に掲げます。あとから写真を見て気付いたんですが、余計なジャンパー線が1本ささったままになっていました。
図1-2は充電式のタイマースイッチを付けたものです。先の放電式とは動作が反対なので、途中にインバータを入れてレベルを反転しています。スイッチを押すとC1がショートされるのでIC1dの12, 13番はLになります。IC1dの11番、IC1cの9番はHですから発振が始まります。スイッチを放すと充電が始まりIC1dの入力端子電圧が少しずつ上昇します。Hレベルと認識される電圧まで上がると発振が止まり、LEDの点滅も止まります。タイマー時間は放電式の回路より長く、約2.4秒でした。
この回路は電源を入れるとひとりでにルーレットが1回まわってから止まります。それ以外は放電式と同じ動作に見えます。
上図はイネーブル端子E (13番) にタイマー付きスイッチをつないだ回路です。クロック発振器 (IC1c) は常時オンにしておきます。タイマーは放電式ですが、E端子はLでカウント、Hで停止という動作なので、間にインバータが必要です。
図1-4は充電式のタイマーをイネーブル端子につないだものです。バッファとして2段のインバータを入れました。バッファなしで直結してもルーレットの動作はしますが、点滅が止まる直前に不規則な光り方をします。この回路も図1-2と同じく電源を入れると自動的に1回動作します。
図1-5はLEDの点滅に合わせて「ピッピッピッ・・・・」という音が出せないかと思って試した回路です。LEDが順次点滅しているうちはうまく動作するのですが、止まるときに不具合が出ます。
回路図右端のIC1aは1200Hzの発振回路で、「ピー」という音を出します。これをIC2のキャリーアウト端子 (12番) からの出力、つまりクロック周波数の10分の1 (12Hz)で細かく断続するしかけです。順次点滅が停止すると同時に音も止まると思ったんですが、うまくいきませんでした。LED1からLED9の間で止まった場合はOKです。問題はLED0で止まったときで、0.6秒間ほど「ピー」という連続音が出てしまいます。
これは多分IC1cの2つの入力 (9,10番) のレベルが変化するタイミングがずれているのが原因だと思います。R5はその調節のために入れたものですが、抵抗値の選定は微妙です。R5が1.5kΩ以下、あるいはIC1cの10番とIC1dの12番を直結すると、LED0〜4で止まった場合はいずれも「ピー」音が出てしまいます。一方R5を4.7kΩ以上にすると、どのLEDで止まるときでも短時間「ジジジ」という低い音が出ます。LED0で止まるときは「ジジピー」という感じになります。
IC1dの保護抵抗R2を取り去って直結にした回路も試しました。こうすると、点滅が停止する前に音が消えてしまいます。R2もR5も取ってしまうと変な音は出ないのですが、何回ルーレットを回してもLED0でしか止まらなくなりました。結局、実験した中で一番ましな回路が上のものでした。
74HC132はやめてタイマーICのLM555でクロック発振回路を組みました。電子ルーレットといえばこちらが定番だろうと思います (あくまで一時代前の定番という意味ですが)。まずはクロック周波数を低くしてちゃんと順次点滅するかテストしました。上がその回路図です。点滅周期は0.7秒、デューティ比はほぼ50%です。シュミットNAND発振回路と同じく、電源を入れて最初に点灯するLEDは2周期分くらい光ります。
図2-2はLM555のリセット端子 (4番) に放電式のタイマースイッチを付けたもので、スイッチのチョイ押しでルーレット動作をします。C1を小さくしたので発振周波数は146Hzになりました。タイマー時間は約3秒間です。
リセット端子はHになると発振、Lになると発振を停止します。電源をオンにした直後はリセット端子がLになっているので、IC2につながれたLEDはどれか1個だけが点灯した状態で止まっています。SW1を押すと4番端子がHになって発振が始まり、LEDは順次点滅します。スイッチを放すとコンデンサの放電にともなってだんだんと電圧が下がり、ある時点で点滅が止まって1個だけが点灯した状態になります。
R4 は10kΩにしましたが、この抵抗が大きすぎると4番端子の電圧が十分に低くならないので、いつまでたっても点滅が止まりません。また、電源のバイパスコンデンサC4も必須です。これがないと点滅が停止する直前に不規則な光り方をします。R3 (100Ω) はC3の急激な充電を防ぐために入れました。
上図は点滅がだんだんゆっくりになって停止する回路で、555を使ったルーレットならではの機能です。ただし、上のような簡単な回路では、ある程度ゆっくりになったところ (10Hzくらい?) から急にストップしてしまうので、あまりルーレットらしい雰囲気になりません。
LM555の5番はコントロール電圧とかFM変調という名前でよばれる端子です。ここに電圧をかけると発振周波数を変化させることができます。ここの電圧が高いほど発振周波数が低くなります。5Vに近くなると発振が停止します。ただし1V以下に下がるとやはり周波数が低くなるようです。図の回路はここに充電式のタイマースイッチを付けたもので、スイッチを押して放すとC2の充電が進むにつれて5番端子の電圧が上昇し、結果LEDの点滅がだんだんゆっくりになって止まります。なお、電源オン直後はルーレットが1回動作してからスタンバイ状態になります。
理屈はそういうことなんですが、実際にやってみると、上にも書いたようにそう簡単ではありませんでした。タイマー時間は2秒くらいで、点滅スピードが落ち始めたと思ったらすぐ止まってしまいます。C2を大きくしても同じでした。一方R3を大きくするとゆっくり点滅するだけで止まらなくなります。R4はC2の急激な放電を防ぐためもありますが、5番端子の電圧が低くなり過ぎないように、ある程度の大きさの抵抗を入れておく必要があります。上の回路定数で、スイッチを押し続けているときの5番端子の電圧は0.95V、発振周波数は183Hz、点滅が停止したときの5番端子の電圧は4.85Vでした。
上は図2-3とはスイッチの動作が逆になる回路です。電源を入れるとLEDは高速で点滅を開始します。ストップスイッチSW1を数秒間押し続けると、点滅がだんだんゆっくりになって止まります。スイッチから手を放すと再び早い点滅を始めます。
図2-5は5番端子にトランジスタをつなぎ、そのベースにタイマースイッチを付けたものです。これはタイマー時間も長く (約5秒)、前の回路よりはスムーズにスピードダウンするので、いくぶんルーレットらしい動きになります。この回路では電源を入れただけではルーレットは回りません。1個だけ点いた状態で止まっています。スイッチを押し続けたとき、つまりLEDが速い点滅をしているときの発振周波数は216Hz、5番端子の電圧は1.08Vでした。点滅がストップしたときの5番の電圧は電源電圧とほぼ同じ5.00Vになりました。
トランジスタのエミッタに10Ωの抵抗 (R4) が入っています。これがないと、スタートボタンを押して放すといったん周波数が上がって点滅が早くなり、それからスピードダウンして止まります。この場合、スタート時の発振周波数は152Hz、5番の電圧は0.75Vでした。使用目的によってはこういう動きもアリかもしれませんが、今回はエミッタに抵抗を入れてスタート時の電圧が低くなり過ぎないようにしました。
この回路のブレッドボード上の配線図と試作写真を下に示します。