NJM2076は1.5Vの電源電圧でスピーカーを鳴らすことができるアンプICです。これと3端子ラジオIC・LMF501Tを組み合わせて、乾電池1本でスピーカーが鳴るICラジオの実験をしました。
下にNJM2076の写真と端子の接続図を示します。なお、写真の右端に写っているのは、今回のラジオに使用した出力トランジスタ2SA1315です。
NJM2076にはDIP8ピンのNJM2076Dと、SIP9ピンのNJM2076Sがあります。NJM2076Dは「エレ工房さくらい」から購入しました。同店のウェブサイトにはこのICの使い方についての解説もあったので参考にさせていただきました。NJM2076Sの方はネットオークションで手に入れました。データシートによると、この他にフラットパッケージのNJM2076Mというのもあるようです。
このICの最大の特徴は1.0Vという低い電源電圧から動作し、しかもスピーカーを鳴らすことができるということです。資料にはヘッドホン用のステレオアンプとBTL方式のモノラルスピーカーアンプの回路が出ていました。BTL動作で使用した場合の出力は、電源電圧1.5VのときNJM2076Sは100mW、NJM2076Dは90mW、電源電圧が1.0Vでもそれぞれ30mWと20mWとのことです (いずれも歪率10%のとき)。
欠点はICの他に2個のPNPトランジスタが必要なことですが、これを含めても外付け部品はたいして多くありません。同じく1.5Vで動作するLMF501Tと組み合わせるには好都合なICだと思います。
( 上の第1図中、NJM2076Dのピン番号の付け方が間違っていたので訂正しました。2007年9月14日。)
まずNJM2076Dを使ったラジオを試作しました。回路は下記の通りです。
ブレッドボードに組んでローカル局を受信してみたところ、1.5V電源とは思えない大きな音で鳴ったので驚きました。これまでも1.5V電源のスピーカーラジオをいくつか実験しましたが、それらはいずれもベッドサイドでなら実用になるかなという程度の音量でした。さすが専用ICは違いますね。
出力トランジスタは最初おなじみの2SA1015でやってみました。これでもまあまあいけますが、長く聞いているとどうも歪っぽく感じます。データシートの回路図では飽和電圧の低いトランジスタを推奨しており、応用回路例では2SA1313-O (hFE=120) が使われています。なので手持ちのトランジスタでこれに近い2SA1315-Y (80V, 2A, 0.9W) に変えてみたところ、すっきりした音になりました。hFEは実測で約170 (Ic=10mA時) です。
C5, C6は1μFのケミコンにしましたが、データシートの回路では0.47μFのタンタルコンデンサが使われていました。そのほうが音が良くなるそうです。それと、R3,R4の2.2Ωの抵抗のカラーコードは「赤赤金金」です。消費電流は無信号時に5mA (IC1が0.3mA, IC2が4.7mA)、大きな音を出すと20mAくらい流れます。
下にブレッドボード上の配線図と試作写真を掲げます。ブレッドボードで組む場合、アースの引き方に注意が必要です。ボード上で赤で示したアース配線はIC2の上をまたぐジャンパー線です。これがないと、音量ボリュームを上げたとき発振気味になります。シャーシへのアースはしてもしなくても同じでした。
次にNJM2076Sを使ってみました。ピン接続はD型とは異なるものの、回路自体は同じです。2本のGNDは本来使い分けるべきなのでしょうが、よくわからないのでいっしょにしてしまいました。そのためかどうか、この回路もアースの引き回しに気を使います。下の実体配線図通りなら問題ありませんが、アースポイントを変更すると「トトトト・・・」という低い周波数の発振が起きることがあります。