ブレッドボードラジオLM555

LM555・タイマー動作の基本

 (2006年6月14日)

 有名なタイマーIC・555を使ったタイマー回路の実験をしました。押しボタンスイッチを押すとタイマーがスタートし、一定時間LEDが点灯する回路です。関連の書籍やウェブサイトでは、この回路は「単安定マルチバイブレータ」「モノステーブルモード」「ワンショット動作」など、いろいろな表現がなされていますが、中身はすべて同じです。

第1図
写真1 ピン接続図

 上に555の写真とピン接続を示します。写真には3個のICが写っていますが、一番左がLM555CNで、今回の実験ではおもにこれを使用しました。まん中はLMC555CNで、LM555のC-MOSタイプです。低い電源電圧でも動作します。右はLM556CNで、LM555が2個入ったICです。
 LM555CNとLMC555CNは8ピンDIP型、LM556CNは14ピンDIP型です。

第2図

 第2図は基本のタイマー回路です。S2(電源スイッチ)を入れ、続いてS1(スタートスイッチ、トリガスイッチ)をチョンと1回押すとタイマーがスタートし、LEDが点灯します。タイマー時間が終了するとLEDが消灯します。タイマー時間はR2とC1の大きさに比例し、図中に書いたように「T(秒)=1.1×R2(MΩ)×C1(μF)」で計算できます。R2=1MΩ、C1=10μFで試してみたところ、LEDが約12秒間点灯しました。

 図右側のタイミングチャートは、動作中の各端子の電圧の変化を表わしています。ICの電源が入ると、2番ピン(トリガ)はHレベル(電源電圧とほぼ同じ)に、3番ピン(出力)はLレベル(ほぼ0V)になります。これがスタンバイ状態です。7番ピン(放電)はIC内部のトランジスタにつながっているのですが、スタンバイ時にはこのトランジスタが導通しているので、6番ピン(スレッショルド)の電圧はほぼ0Vです。
 S1をチョンと押すと、2番が一瞬Lになります。これをきっかけに3番は反転してHになり、LEDが点灯します。同時に7番は開放状態になる(トランジスタがオフになる)ので、電源のプラスからR2を通してC1に充電が始まります。C1への充電が進むにつれて6番の電圧は高くなります。6番の電圧が電源電圧の2⁄3(この回路では4V)になるとタイマー時間が終了し、3番はLに戻ってLEDは消灯します。同時に7番が導通し、C1にたまっていた電荷はIC内部のトランジスタを通ってGNDへ放電します。

第3図

 第3図左側のように6番端子とGND間にデジタルテスタの電圧計をつなぐと、6番の電圧の変化がわかります。スタンバイ時にはほぼ0Vですが、タイマーがスタートすると徐々に電圧が高くなり、約4Vに達した瞬間にLEDが消灯し、6番の電圧は0Vにもどります。
 ここにつなぐ電圧計は内部抵抗が高くないとだめです。普通のアナログテスタをつなぐと、C1を充電するべき電流をバイパスしてしまうので、6番の電圧が上がりきらず、LEDがつきっぱなしになります。
 第3図右側は7番端子にLEDをつないだもので、これはC1にたまった電荷が7番端子から放電するのを確かめる実験です。タイマー時間が終わってLED1が消えた瞬間、LED2がピカッと1回光ります。
 なお、5番端子(コントロール電圧)は開放のままにしてある製作例が多いのですが、今回は電源ラインからのノイズなどによる誤動作を防ぐため、0.01μFのコンデンサでアースしました。
 第2図の回路のブレッドボード上の配線図と試作写真を下に示します。

実体図2 写真2

 タイマー時間を設定する抵抗とコンデンサの値は任意に選ぶことができますが、極端に大きくしたり小さくしたりするのは問題があります。下のグラフはICメーカー(ナショナルセミコンダクタ)のデータシートに載っていたタイマー時間の早見表です。ただしオリジナルはグラフの線がちょっとずれている(計算式と合わない)ので修正しました。
 これを見ると抵抗は1kΩ〜10MΩ、コンデンサは0.001〜100μFとなっています。だいたいこれくらいが実用範囲なのでしょう。抵抗を小さくしすぎると、IC内部のトランジスタに大きな電流が流れてICが壊れるおそれがあるとのことです。また、100μFより容量の大きなコンデンサはもれ電流が多く、高抵抗と組み合わせるといつまでたってもタイマーがオフにならないという事態が生じる可能性があります。

第4図

 ところで、ICの電源電圧とタイマー時間の関係はどうなっているかと思い、第2図の回路で電源電圧を9Vおよび12Vに上げてみましたが、タイマー時間はほとんど変化しませんでした。電源電圧を上げるとC1への充電電流が増えますが、タイマーがオフになる電圧(電源電圧の2⁄3)も高くなるので、結局充電にかかる時間は変わらないということなんだろうと思います。

第5図

 上図は、第2図の回路について、スタンバイ時とタイマー動作時のIC各部の電圧と電流を測定したものです。スタンバイ時、ICは3.8mAの電流を消費します。この電流はそのまま1番ピンからGNDへ流れていきます。3番ピンから流れ出る電流はゼロではありませんがごくわずかです。
 タイマーがスタートすると3番ピンがHになるのでここからLEDを通って2.8mA流れ出します。一方、1番ピンから流れ出る電流は2.6mAに減少しました。したがって全消費電流は両者を合計した5.4mAとなります。
 スタンバイ時の消費電流は電源電圧によって変わります。9Vのとき5.9mA、12Vのとき7.9mAでした。

 第5図を見ると、タイマー動作時の3番ピン(出力端子)の電圧は4.7Vです。電源電圧が6.1Vですから1.4V降下しています。Hレベルといってもずいぶん低いように感じます。そこで、3番ピンにいろいろな値の抵抗をつないで、出力電流(I3)と出力端子電圧(V3)の関係を調べてみました。測定回路と測定結果を下に掲げます。

第6図

 3番ピンを開放にしてタイマーを動作させても、出力電圧は5.5Vにしかなりません。出力電流を1mA流すと端子電圧は4.8Vに下がります(1.3V降下)。しかしそれ以降は、出力電流が増えても端子電圧にそれほど大きな変化はみられませんでした。
 IC自体の消費電流(1番ピンから流れ出る電流)は、R3の値にかかわらず、スタンバイ時3.8mA、タイマー動作時2.6mAでほぼ一定でした。ただ、R3が小さいとスタンバイ時にもI3が少し流れる(100Ωのとき0.02mA、47Ωのとき0.05mAくらい)ので、その分1番ピンから流れ出る電流が減ります。

 ついでに、出力端子と電源プラス間に抵抗をつないだときの状況も調べてみました。測定回路と測定結果は下記の通りです。

第7図

 この回路ではスタンバイ時に電源プラスから3番ピンへ向かって電流が流れます。R3が小さいほど、すなわち3番ピンへ流れ込む電流が多いほど端子電圧も高くなります。ただ、変化のしかたは前記と少し違います。第7図の表ではわかりにくいかもしれませんが、出力電流と端子電圧はだいたい比例しています。電流が少ないときは端子電圧はほぼ0Vです。I3が95mAでもV3は1.4Vですから、前記の回路に比べると変化は小さいといえます。
 ICの消費電流(8番ピンから流れ込む電流)は、スタンバイ時3.8mA、タイマー動作時2.6mAで、前の回路と同じでした。
 ちなみに、データシートによるとLM555CNの最大損失は25℃で1180mWとのことですので、電源電圧が6Vのときは150mAくらいまで流しても大丈夫だと思います。