ブレッドボードラジオメーカー品ラジオ

ボード式3石レフレックスラジオ

 チェリー (明光電機) のボード式3石レフレックスラジオキット CK-333 を作りました。おそらく30年くらい前からあるキットだと思います。大型の基板上に各部品が回路図どおりの配置で並んでいるので、ラジオの各部分のはたらきを調べたりする教材として好適です。ただ基板裏の配線は部品の足の間をスズメッキ線でつないでいく方式なので、組立てには少し手間がかかります。

 写真1

回路と部品

 第1図

 上記がこのラジオの回路図です。レフレックス回路の後ろにトランス結合の2石低周波アンプが付いています。RFCが二次巻線のあるタイプだったり、段間にトランスが使われていたりと、全体にゲルマニウムトランジスタの時代を思わせる回路形式ですね。シリコントランジスタならレフレックス+低周波1石でスピーカーを鳴らせるはずです。実際、ローカル局受信時にはボリュームの位置は半分以下で十分な音量になりました。ボリュームを最大にすると音が割れてしまいます。音質は昔のポケットラジオのような感じで、音量を上げるとちょっとキンキンして耳に障ります。

 選択度は良好で、ローカル局もきちんと分離できます。夜間には遠距離局が何局か受信できました。レフレックスに付きものの発振等のトラブルもありません。電源は9V (006P)、全電流は8.5mAです。レフレックス段 (TR1) には0.08mAしか流れていません。以前にブレッドボードでレフレックスラジオの実験をしたとき、周波数による感度差や発振に悩まされましたが、コレクタ電流が多すぎたのでしょうか。

 トランジスタはTR1とTR2が2SC1815-O、TR3が2SC1815-GRです。hFEはOが110、GRが250でした。たぶん理由があってランクを区別しているのだと思いますが、組立説明書にはそのことについて何も記載がありませんでした。別紙の部品リストを見てTR3だけGRになっているのに気が付きました。

 RFCは3mHとのことです。巻線の直流抵抗を測ってみると、一次側・二次側ともに14Ω前後でしたので、巻数比は1:1と思われます。低周波トランスは入力側 (T1) が10kΩ:1kΩ、出力側 (T2) が800Ω:8Ωです。サンスイのトランスでいうとそれぞれST-20、ST-33にあたりますが、大きさはどちらもST-30くらいしかありません。

 C5は説明書の回路図ではケミコンになっていましたが、購入したキットには無極性のケミコンが入っていました。また、説明書の回路図ではこのケミコンはTR2のベース側がプラスになっているのですが、これで正しいのでしょうか。ボリューム側のほうが電圧が高いように思うのですが。

実体配線図

 下に基板のアップの写真と実体配線図を掲げます。各部品がほぼ回路図通りの位置に並んでいて、基板の表側には部品間の配線が白線で示されています。チューニングダイヤルにCDマークが付いているのが時代を感じさせます。基板の大きさはヨコ18cm、タテ12cm、完成時の高さ (厚み) は35mmくらいです。最初の写真のように、ラジオ全体がすっぽり入るアクリルケースが付いています。

 写真2

 第2図

 上の実体配線図は部品取り付け面から透視した形で描いてあります。銅箔が付いているのは図で緑色で示した部分、および部品の足を挿す穴の周囲だけです。灰色の線で描いたところは、部品の足を曲げて、あるいはスズメッキ線でつなぎます。「Y」と記した2つのランド間やスピーカーはビニール線で配線します。学校教材向けにわざとこうしてあるのでしょうが、普通のプリント基板に比べると製作は面倒です。下の写真でご覧の通りの雑な仕上がりですが、これでも完成までに3時間近くかかってしまいました。

 写真3

2SC1815のhFEランク

 余談ですが、このキットで初めて2SC1815-Oの実物を見ました。記念に全ランク揃い踏みの写真を撮りました。2SC1815をはじめとする東芝のトランジスタは、R, O, Y, GR, BLといった色の名前の頭文字をhFEランクの記号として使っています。昔は個々のトランジスタの頭に色を付けて区別していたそうで、その名残りでこうなっているとのことです。各ランクとhFEの値は2SC1815の場合は下の表の通りですが、トランジスタの品種によっては同じ記号でもhFEの範囲が違う場合があるので注意が必要です。

写真4 図3