ブレッドボードラジオゲルマラジオ

電池管検波ゲルマラジオ

 1T4という乾電池ラジオ用の5極真空管を2極管接続にして検波するゲルマラジオを作りました。製作にあたっては、ラヂオクマ氏のサイト「愛しのB級ラジオ博物館」に載っていた回路図を参考にさせていただきました。と言うか、ほとんどデッドコピーなんですけど。

電池管検波ゲルマラジオの回路図

 回路は第1図の通りです。ゲルマニウムダイオードの代わりに真空管検波器が入る形です。第1グリッド・第2グリッド・プレートが陽極、フィラメントのプラス側が陰極になります。

 普通のゲルマラジオの回路との大きな違いは、検波器の出口にRという抵抗がつないであることです。この抵抗がないと音が出ません。もっとも、普通のゲルマラジオでも抵抗が付いているものを見かけますが、ゲルマニウムダイオードやショットキーダイオードの場合は抵抗がなくてもちゃんと検波できます。
 抵抗と並列に入っているコンデンサCは、あってもなくても同じような感じです。クリスタルイヤホンがコンデンサの代わりになっているのでしょう。

 電灯線アンテナをつないで聞いてみると、当地のローカル局はすべて混信もなくよく聞こえました。ゲルマニウムダイオードで検波したときに比べるとやや音が小さいようにも感じますが、音質は良好です。柔らかくて聞きやすい音です。

 検波回路はバーアンテナの白タップにつなぎました。黒につないだ方が音が大きくなりますが、高い周波数の局が受信できなくなります。また、上の回路ではプレートと各グリッドをすべて結んで陽極としていますが、実際の検波性能に寄与するのはほとんど第1グリッドです。第2グリッドとプレートは開放のままにしておいても、聞こえ方にあまり変化はありません。

 フィラメント電源は乾電池です。実験に用いたものは使い古しのため電圧が1.33Vに下がっていました。あとで新品に変えてみましたが、それほど違いはありませんでした。

 ブレッドボード上の配線図と完成写真を下に示します。

電池管検波ゲルマラジオの実体配線図 電池管検波ゲルマラジオの写真

電池管の接続方法

 第2図は、電池管で検波するときの接続方法のいろいろを示しています。1T4は1番ピンと7番ピンがフィラメント端子ですが、1番ピンには第3グリッド(サプレッサー)もいっしょにつながっています。そのため全部で4通りのつなぎ方が考えられます。

 図中にも書いた通り、フィラメントのプラス側から検波出力を取ったときは音が大きく、マイナス側から取ると微かにしか聞こえなくなります。このことはラヂオクマ氏も製作記の中で指摘されており、その理由として「プラスのバイアスがかかるから」と書かれています。
 これはたいへん興味深い現象です。実際にどれくらいの電圧がかかっているのか、デジタルテスタで測ってみました。結果は下の第3図の通りです。

電池管に生じる電圧

 第3図は、第2図の4通りの接続方法のそれぞれについて、真空管検波器の両極間に発生する直流電圧の値を示したものです。よく聞こえるつなぎ方のときは1V前後の電圧が発生しますが、音が小さいつなぎ方のときはほとんど0Vです。極性は陰極がプラス、陽極がマイナスです。
 これは、フィラメントが暖まると陽極から陰極へ向かう電流が生じ、その電流が1MΩの抵抗の中を流れるので、図に示したような電圧が発生すると考えられます。つまり、2極管が自分自身でバイアスをかけている状態です。

各種傍熱管に生じる電圧

 第4図を見てください。手元にあった各種傍熱管について同様の実験をした結果です。ヒーターは直流で点火しましたが、傍熱管ではヒーターとカソードが絶縁されているので、ヒーター電源の極性を反対にしても発生する電圧は同じです。管種によって多少差はありますが、いずれもカソード側にプラス、プレート・グリッド側にマイナスの電圧が出てきます。教科書に載っている「接触電位差」というのはこれのことでしょうか。

 1T4の場合もこれと同じ電圧が発生しているはずです。この電圧と、フィラメント電圧(の半分?)がお互い相殺し合って、第3図に示したようなバイアス電圧となって現れるのではないかと思います。

電池管ゲルマラジオの回路その2

 第5図は、1MΩの抵抗を真空管検波器の両極間へ移動させたものです。これでも第1図の回路と同じように動作します。

 第1図の回路の説明のところで、ゲルマニウムダイオードで検波するときは抵抗はいらないと書きました。この理由について、ある本に「ゲルマニウムダイオードは逆方向にも少し電流が流れるので、高抵抗が並列になっているのと同じ」と説明されていました。私は長い間このことが理解できなかったのですが、上の回路を実験してみてようやくわかった気がしました。

 (2004年12月12日)

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