ブレッドボード(breadboard)とは、本来パン生地をこねるときに使う木の板を意味する言葉です。初期の真空管ラジオは木の板に部品を並べて作ったので「ブレッドボードラジオ」とよばれたそうです。時代は移り、現在ではブレッドボードと言えば、ICソケットをたくさん並べたような形をした電子回路実験用の配線盤のことをさすようになりました。
ブレッドボードを使えば、いちいちハンダ付けをしなくても、部品をボードの穴に挿していくだけでたやすく電子回路が組み上がります。部品の交換や回路の変更も簡単です。また、同じ部品を何回も使いまわしできるので、とても経済的です。構造上、高度な製作には向かない面もありますが、初心者が電子工作を楽しむには打って付けのツールだと思います。
ブレッドボードは、プラスチックの板に部品のリード線を挿すための穴(ソケット)がたくさん並んだ形をしています。大きさや穴の並び方はさまざまですが、私がトランジスタ回路で主に使用しているのはEIC-801という型番のものです。価格は通販で250円でした。上の写真左が購入時の状態です。私はこれを写真右のようにアルミシャーシに取り付けて使っています。シャーシの右下についているのは電源ジャックとスイッチです。
EIC-801の大きさはタテ54mm、ヨコ84mm、厚さ10mmです。側面には小さな突起がいくつか出ていて、複数のボードを連結できるようになっています。表面には全部で400個の穴があります。穴のパターンを第1図に示します。隣り合った穴の間隔は0.1インチ、A2段とB1段の間、B5段とC1段の間など、少し空いているところの間隔は0.3インチです。
これらの穴はすべて板バネ型のソケットになっているのですが、1個1個独立しているわけではなく、ボード内部でグループ毎につながっています。図で色分けした如く、A1,A2、およびD1,D2はそれぞれ横1列がひとつのブロックです。この部分は通常電源ラインとして使います。一方、Bの段、Cの段は縦方向の5個がつながっています。ICなどを使った回路が組みやすいようにうまく考えられていると思います。
真空管ラジオの製作では横長タイプのブレッドボードを使用していますが、基本的な構造は同じです。
このボードの穴に部品のリード線やジャンパー線を挿して回路を組んでいくわけですが、ここでは簡単な例として、第2図に示したようなLEDの点灯回路をブレッドボードを使って組んでみました。下の実体配線図と写真を見比べてください。D2段の右端からプラス電源が供給され、ジャンパー線によってA1段へ導かれます。A1段の3ヵ所からそれぞれ抵抗とLEDを通って電流が流れます。回路のマイナスはすべてD1段に接続され、電源のマイナスへと向かいます。
ブレッドボードを用いる最大のメリットは、何といっても手軽に実験できることでしょう。部品をどんどんボード上に並べていけばそれでもう電子回路の出来上がりです。部品定数や回路の変更も簡単です。上の例で言えば、LEDや抵抗を別のものとちょっと挿し替えてみることで、明るさの違いを比べたりする実験が手軽にできます。また、各部品はジャンパー線に至るまで何度でも再使用できます。経済的だしゴミも出ません。うまく動作した回路については、回路図と実体配線図を記録しておけば、短時間ですぐに再現できます。
その一方で、やはり欠点もあります。そのままではボードに挿しにくい部品があるので、それらはあらかじめ予備加工しなければなりません。これについては次章以降で私流のアイディアを紹介しています。それと、同じ模様のパターンが並んでいるので、注意しないと誤配線してしまいがちです。私などもついうっかり1列間違えて部品を挿したりすることがあります。さらに、ブレッドボードの構造上、高周波、高インピーダンス、高電圧の回路には不向きです。当ホームページで紹介している程度の回路ならほとんど問題ないと思いますが、真空管ラジオの製作はブレッドボードの耐圧を超えた使い方になりますので、あまりお勧めできません。
(2006年6月25日)