ブレッドボードラジオ電源回路

定電圧ダイオードの実験

 定電圧ダイオード(ツェナーダイオード)の基本的な動作を確かめるため、定電圧ダイオード1個だけの、いちばん簡単な定電圧電源回路の実験をしました。このようなタイプの定電圧回路は「シャント・レギュレータ(並列型レギュレータ)」とよばれているようです。

1. 1Z12を使用した定電圧電源回路

実験回路1

 上の回路図は1Z12という定電圧ダイオードを用いた12Vの定電圧電源回路です。1Z12の定格は12V・1Wなので最大ツェナー電流は83mA(=1W÷12V)ということになりますが、定格ぎりぎりはよくないと思うので、ツェナー電流が約50mAになるように電流制限抵抗Rの値を調整しました。なお、回路図では省略していますが、電源トランスの一次側にはスイッチとヒューズが入っています。

 この回路で、負荷電流(Iout)を0から60mAまで変化させたときのツェナー電流(Izd)、入力電圧(Vin)、出力電圧(Vout)、リップル電圧(Vrip)を測定しました。リップル電圧はテスタのAC電圧計による測定なので、大小の比較の目安として見てください。

 結果は下の表のようになりました。IoutとIzdの単位はDCmA、VinとVoutの単位はDCV、Vripの単位はACVです。

IoutIzdVinVoutVrip
05321.013.00
104320.913.00.003
203320.912.90.004
302420.912.80.004
401520.912.60.005
505.220.812.50.010
60020.611.60.13

 負荷電流が0のときツェナー電流は最大です。今回の例では53mAになりました。負荷電流が増えるにしたがって、その分ツェナー電流が減少します。負荷電流を60mAにすると定電圧ダイオードにはまったく電流が流れなくなり、したがって定電圧を維持することもできなくなります。

 定電圧ダイオードとは言っても、やはり負荷電流が多くなれば少しずつ電圧が低下します。でも、普通の整流回路だけのときに比べるとはるかに安定しています。負荷電流が増えるとツェナー電圧が下がるのは、ダイオードに流れる電流の変化によってダイオードの温度が変わるためのようです。ツェナー電圧が下がると、ツェナー電流が少し増えるので、左表ではIoutが多くなるにしたがってIoutとIzdの合計も大きくなっています。

 実験回路ではツェナー電流測定のためダイオードと直列に電流計を入れています。この電流計の内部抵抗が2Ωほどあるので、ツェナー電流の多いところでは出力電圧が少し高めに出ているかもしれません。

 リップル電圧を測定する電圧計のところにクリスタルイヤホンをつなぐと、小さいハム音とともに「シー」というノイズ音が聞こえます。定電圧ダイオードが出すノイズだと思います。ラジオなどをつないだとき、このノイズはどうなんでしょう。負荷電流が50mAを超えてダイオードの定電圧機能が失われると、ハム音が急に大きくなります。

2. 1Z6.2を2個使用した定電圧電源回路

実験回路2

 1Z12が1個では出力電流が多く取れないので、1Z6.2を2個直列にして、出力が100mAの電源回路を組んでみました。Rは50Ω2W(100Ω1Wの抵抗器を2本並列)にしました。
 結果は下表の通りです。

IoutIzdVinVoutVrip
010319.013.80.016
208418.913.70.017
406518.913.60.019
604618.913.50.021
802718.813.40.028
1009.818.713.10.12
1200.818.212.10.27

 出力電圧の安定度は1Z12が1個の場合と同じような感じです。ただ、負荷電流が100mAのときの出力電圧の下がり方が少し大きいようです。リップル電圧の増え方からしても、Iout=100mAでは定電圧ダイオードとしての機能が低下しているように思われます。

 1Z12はツェナー電流がほんの少しでも流れていれば定電圧を維持していましたが、1Z6.2はツェナー電流が10mAでも定電圧特性が失われてしまうんですね。つまり、1Z6.2を用いて出力100mAの定電圧回路を作るには、ダイオードに無駄な電流を10mA以上流さなければならないということになります。一方、負荷電流を120mAにしてもまだダイオードに電流が流れていますが、この領域では定電圧ダイオードは単なる抵抗器と同じです。

 それに、今回の回路はリップルが多いです。イヤホンで聞いても違いがわかります。

3. ツェナー電圧による立ち上がりの違い

1Z12
VzdIzd
11.60.002
11.70.002
11.80.002
11.90.003
12.000.022
12.050.060
12.100.14
12.150.26
12.200.53
12.251.26
12.302.85
1Z6.2
VzdIzd
4.00.046
4.50.090
5.00.16
5.50.36
5.60.45
5.70.55
5.80.68
5.90.90
6.01.30
6.11.84
6.22.62

実験回路3

 1Z12と1Z6.2について、ツェナー電流が少ない部分での性質の違いを確かめるため、両者の立ち上がり特性(逆電圧だから立ち下がりって言うのかな?)を測定してみました。測定回路は上記の通りです。電源は市販の電圧可変のものを使用しました。

 結果は左記のようになりました。Vzdの単位はV、Izdの単位はmAです。
 1Z12は12V近辺でぽんと立ち上がって、その後急激に電流が増加します。一方1Z6.2は、定格ツェナー電圧よりもかなり低いところからだらだらと立ち上がっていきます。このあたりの違いが上の実験結果にも現れていると思います。
 両者の違いがよくわかるように、測定結果をグラフにしたものを下に示します。

1Z12のグラフ 1Z6.2のグラフ

 上記の2種だけ比較すると、電圧の低い定電圧ダイオードほど立ち上がりが緩やかなのかと思ってしまいますが、別の実験で用いた05Z6.2(0.5W, 6.2Vの定電圧ダイオード)は、0.5mA程度の電流を流してやれば定電圧になりました。W数によっても変わってくるようです。

4. トランジスタと組み合わせる

 定電圧ダイオード単独では出力電流に限界があるので、トランジスタと組み合わせてパワーアップする回路を実験しました。定電圧ダイオードは0.5W型の05Z12、トランジスタは2SD2012(hFE=約350)を用いました。なお、実験にあたってはJH2CLVさんのホームページの記事を参考にさせていただきました。

実験回路4

IoutVinVoutVbIzdIcVrip
017.212.40.742.01520
5017.212.40.701.81020.012
10017.112.30.641.5550.015
15017.012.10.441.09.00.11

 結果は左記の通りです。IzdやIcを測定するために電流計を挿入すると回路の動作状態が少し変わってしまうので、最初に電流計を入れないでVoutを測定し、IzdやIcはその都度電流計を入れて測定し直しました。

 Iout=100mAまでは非常に安定していますが、150mAになると電圧がやや降下し、リップルが急増します。細かく調べてみると、Ioutが120mAを超えるあたりから安定度が悪くなります。先に実験した1Z6.2のように、この回路もある程度(けっこうたくさん?)電流を流しておかないと定電圧にならないようです。R1を50ΩにするとIoutがゼロのときIc=115mAになりますが、この状態でIoutを100mA以上にすると、やはり電圧が下がってリップルが多くなりました。

 R2は100Ωから1kΩまでいろいろ差し替えてみました。R2が小さいとIzdが多くなり、R2が大きいとIzdが少なくなります。しかし電圧安定度に関してはあまり変化がありませんでした。

 (2005年6月25日 初稿)
 (2005年7月10日 第4節を追加)

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