ブレッドボードラジオ電源回路

シリーズ・パス型定電圧電源回路(その1)

 定電圧ダイオードとトランジスタを組み合わせたシリーズ・パス型定電圧電源回路(シリーズ・レギュレータ)の実験をしました。出力電流の大きな定電圧電源はこのタイプが主流になっているようです。

1. 1Z12+トランジスタ

実験回路1

 上が今回実験した回路です。ツェナーダイオードは1Z12、トランジスタは2SD2012(hFEは約350)を用いました。トランジスタでの損失は1W以下なので、放熱器は付けませんでした。また、出力電流を完全に0にする(トランジスタのエミッタを開放にする)と正常に動作しなくなるので、出力側に10kオームの抵抗を接続しました。

IoutVinVoutVzdIzdVrip
122.612.012.5100.001
5020.411.912.57.80.002
10018.411.812.45.90.003
15016.611.812.44.20.006

 実験の結果は左記の通りです。Vin,Vout,Vzdの単位はDCV、Vripの単位はACV、Iout,Izdの単位はDCmAです。
 出力電流Ioutを150mAにしても電圧降下は0.2Vで、しかもリップル電圧Vripもごくわずかです。出力電圧Voutはツェナー電圧Vzdより約0.6V(トランジスタのベース・エミッタ間電圧分)だけ低くなります。Vripは数字的には小さいですが、クリスタルイヤホンをつなぐと微かなハム音以外に「シー」というノイズが聞こえます。ツェナーダイオードと並列に、あるいは負荷抵抗と並列にコンデンサをつないでみましたが、目立った改善は見られませんでした。

 R1の決め方がわからなかったのでいろいろな抵抗値で試してみたところ、R1が470Ωから4.7kΩの範囲なら出力電圧の安定度はほとんど変わりませんでした。R1を1kΩから470Ωにすると、Izdが約2倍に増え、Vzdは0.1Vほど上昇します。したがって出力電圧もその分高くなります。R1を大きくすればその反対の結果になります。R1が大きいほうがツェナーダイオードに無駄な電流を流さなくてすみますが、Izdが少なくなりすぎるとツェナーダイオードの定電圧特性が失われ、またトランジスタのベース電流も不足するので、R1を極端に大きくするのは良くないと思います。

2. 1Z15+トランジスタ

実験回路図2

IoutVinVoutVzdIzdVrip
122.915.215.7150.001
5020.615.115.6110.003
10018.715.015.66.60.007
15016.914.915.53.10.017

 この回路は、ツェナーダイオードを取替えることによって出力電圧を変えることができます。そこで、1Z15を使って15V出力にしてみたのが上の回路図です。R1は470Ωにしました。

 各部の電圧・電流の測定結果を左に記します。出力電圧Voutはツェナー電圧Vzdより0.6V低い値でほぼ安定しています。Ioutが150mAのときリップル電圧の増え方が大きくなっていますが、これは入力電圧と出力電圧の差が小さくなったので、入力電圧に含まれるリップルの影響を受けているのだと思います。
 上と反対に低い電圧のツェナーダイオードを使えば出力電圧を低くすることができます。しかしこの場合はトランジスタでの消費電力が増えるので、放熱を考える必要があります。

 ところで、1Z12にしても1Z15にしても、ツェナー電圧自体は半端な値なのに、トランジスタと組み合わせると出力電圧がちょうど12Vまたは15V近辺になりました。これは偶然でしょうか。それとも、こういう使い方をすることが多いのではじめからそのように作ってあるのでしょうか。

3. 定電流ダイオードを使う

実験回路図3

IoutVinVoutVzdIzdVrip
122.812.012.5100.001
5019.711.912.5100.001
10017.911.912.5100.001
15016.311.812.49.60.002

 上の回路はR1の代わりに10mAの定電流ダイオードを入れてみたものです。ツェナーダイオードに流れる電流を一定にしてやれば出力電圧がもっと安定すると思ったのですが、結果は前とあまり変わりませんでした。なぜでしょう。
 リップルは小さくなりました。これくらいならイヤホンで聞いてもハム音はほとんど気になりません。ただ「シー」というノイズは相変わらずです。

 (2005年6月26日)

 電源回路 目次へもどる
 トップページへもどる