別項「スパイダーコイルを使ったゲルマラジオ (その1)」の中で、科学教材社のキットのスパイダーコイルが羽根2本おきに巻くように指定している理由がわからない、と書きました。実際に1本おきと2本おきの両方のコイルを作ってみればいいんですけど、なにしろ巻くのが大変なので、ずっと放ったらかしにしていました。
そんな中、最近になって「エレ工房さくらい」さんがこの疑問に答えを出してくれました (同サイト「お〜まい、がぁ〜!」内、2008年4月10日「蜘蛛の巣」)。羽根1本おきにすると、2本おきのときと比べて同じ巻数でもコイルの直径が大きくなるんだそうです。そのため規定の巻数に達しないうちに巻枠がいっぱいになってしまうとのことです。なるほど、そういうことだったのかー。というわけで、私もようやく重い腰を上げて2つのコイルを作ってみることにしました。答えがわかってからやるのはずるいですけど。
上が科学教材社のキットに入っているスパイダーコイルの巻枠と巻線です。巻枠はあずき色のファイバー製で、外径が87mm、羽根の根元部分の直径が32mm、厚さが1mmです。羽根の数は15本です。羽根の先端に3ヶ所ハトメラグが付いていますが、これは私が付けたもので、キットの仕様ではありません。巻線は0.5mm径のポリウレタン線が15m用意されています。
スパイダーコイルの巻き方についてはゲルマラジオの製作のページにも書きましたが、巻線を羽根の手前→向こう側→手前、というふうに交互に引っ掛けながら巻いていきます。ここで1本おきとか2本おきとか言っているのは、羽根の何本毎に線を反対側へ持っていくかということです。下に、1本おきと2本おきの巻き方の違いを図で示します。
前置きが長くなりましたが、実際に巻いてみた結果が上の写真です。写真2は羽根1本おきに巻いたもので、40回巻いたところで枠がいっぱいになりました。これに対し羽根2本おきに同じく40回巻いてみたのが写真3で、巻枠にはまだかなり余裕があります。ずいぶん違いが出ますね。コイルの巻幅は、1本おきのときが22mm、2本おきのときが12mmでした。羽根1本おきに巻くと線と線の間に隙間ができるので、その分直径が大きくなります。
写真3のコイルにさらに線を巻き足して、キットで指定の70回巻きにしたのが下の写真4です。これでちょうど巻枠がいっぱいになりました。
羽根1本おき40回巻き、羽根2本おき40回巻き、羽根2本おき70回巻きの3種類のコイルを、LMF501Tを使ったICラジオにつないで受信周波数を調べました。このICは同調回路の共振周波数に与える影響が少ないので、こういう実験には好都合です。回路図を下に掲げます。バリコンの最大容量は270pFです。
結果は次の通りです。
40回巻きではインダクタンスが足りないので受信範囲が上の方へずれます。羽根1本おきと2本おきを比べると、下はほぼ同じですが、上がかなり違います。1本おきにすると線と線の間があくので、線間容量が減って上が伸びるのではないかと思います。ソレノイド巻き (円筒形のコイル) でも同じ経験をしました。
2本おきで規定の70回巻くと下は中波バンドぴったりの530kHzになりました。上はバンド外まで伸びていますが、ゲルマラジオで長いワイヤアンテナをつないだり、トランジスタで検波したりすると、これらのコンデンサ分が同調回路にぶら下がるので、ほぼ中波バンド上端までの範囲に収まります。
放送の聞こえ方は、1本おきでも2本おきでも大差ありませんでした。当地 (石川県金沢市) では1107, 1224, 1386kHzにローカル局が出ていますので、上のどのコイルでもすべての局が受信できます。今回実験したラジオは高い周波数ほど感度が良くなるようです。一番低い1107kHzの局は少し弱くて、1224kHzの局の混信を受けました。
実験は下の写真のようにブレッドボード上に組んだラジオで行ないました。