ダイオードで検波した後、トランジスタで低周波増幅してイヤホンを鳴らす1石ラジオです。ゲルマラジオの次はこれだろうと思ったのですが、そんなに簡単ではありませんでした。
第1図は、ダイオードで検波した後、抵抗負荷の1石アンプで増幅してイヤホンを鳴らすラジオです。検波にはショットキーダイオードの1SS108を用いましたが、1N60などのゲルマニウムダイオードでも同じです。
組み立てて鳴らしてみると、トランジスタ検波の1石ラジオと同じようによく聞こえました。めでたしめでたし、といきたいところですがちょっと変だと思いませんか。この回路のC2より後ろ側はトランジスタ検波1石ラジオと同じです。ためしに、C1を取り去って検波ダイオードをショートしてみると、これでもちゃんと音が出ます。と言うか、むしろこの方が若干音が大きいくらいです。つまり、C1というコンデンサで高周波をカットしてやらないとトランジスタが検波してしまい、ダイオードを入れた意味がありません。
要するにこのラジオは、「ダイオードで検波させる回路」ではなくて「トランジスタで検波させない回路」ということになります。ダイオードとC1がなくてもちゃんと動作するのに、わざわざ無駄な部品を追加するのはナンセンスなことです。
あらためていろいろな本やラジオ雑誌を見てみると、シリコントランジスタの時代になって以降、今回実験したような「ダイオード検波+低周波増幅」という構成の1石ラジオの製作記事はほとんど姿を消してしまったことに気がつきました(ゲルマニウムトランジスタの時代の雑誌にはけっこう登場します)。シリコントランジスタはこういうタイプのラジオには向いていないのでしょうか。
ブレッドボード上の配線と完成写真は下記の通りです。
第2図は、ST-30をコレクタの負荷にしたものです。バイアス抵抗(R)を小さくしてコレクタ電流を増やしました。このラジオはトランジスタ検波1石ラジオよりだいぶ大きな音で鳴ります。2mのアンテナではちょっとうるさいくらいです。これならダイオード検波にした意味があろうというものです。
検波ダイオードはバーアンテナの緑タップにつなぎました。白タップにつなぐとローカル局どうし少し混信します。これは第1図の回路でも同じです。コレクタ電流は約1.7mAですが、これでもダイオードとC1を取り去るとトランジスタが検波します。ただし音は小さくなります。
ボード上の配線と完成写真は下記の通りです。
第3図は、検波ダイオードの前からバイアスをかける回路です。こうすることで、シリコンダイオードでの検波が可能になります。試作回路では1S1588を使ってみました。第2図の回路と同じく、ローカル局は十分な音量で受信できます。
バイアス抵抗を第2図の回路のときと同じ(100kΩ)にして比べると、ベース回路の途中にダイオードが入っている分ベース電流が減り、したがってコレクタ電流も減少します。聞こえ方にそれほど差は感じられませんが、とりあえず今回は68kΩにしておきました。
ボード上の配線図と完成写真を下に掲げます。
第4図は、出力トランスにST-32(1.2kΩ:8Ω)を使って、マグネチックイヤホンを鳴らす回路です。イヤホンは、ダイソーの100円ラジオ用として売られていたインピーダンスが32Ωのもの(これも100円)を用いました。
このラジオはこれまでのものに比べると少し音が小さいです。2mのワイヤアンテナをつないでも、ゲルマラジオ(電灯線アンテナ)よりやや大きい程度の音量です。コレクタ電流を増やしてもだめでした。でもマグネチックイヤホンはクリスタルイヤホンのように耳の中でガサガサ言わないので扱いやすいというメリットはあります。
ボード上の配線と完成写真は下記の通りです。
第5図は、FETを使って低周波増幅するものです。抵抗負荷では音が小さかったので、ST-30をつないだらまあまあの音量になりました。しかし、同じトランス負荷で比べると、普通のトランジスタ(2SC1815)を使った方が大きな音が出ます。
ボード上の配線と完成写真は下記の通りです。
(2004年11月15日 初稿)
(2004年12月19日 第5章を追加)