さいたま市の「エレ工房さくらい」からUM77T-83LというICを購入しました。メロディICの一種で、モールス符号の「SOS (トトト、ツーツーツー、トトト)」を連続して出力するものです。これでいろいろ遊んでみたのでレポートします。なお同店のウェブサイトにはこのICの使い方に関する資料もあったので参考にさせていただきました。
上にUM77T-83Lの概要をまとめておきます。UM66Tシリーズと同様、トランジスタ形の3本足ICです。ピン接続も同じです。3Vの電源と圧電スピーカーをつなぐだけで「ピピピ、ピーピーピー、ピピピ」と鳴り出します。ピー音の周波数は2315Hz、SOS信号の1サイクルは約5秒でした。出力端子の電圧は音が出ているとき3V、無音のとき0Vです。ただし出力電流が大きくなると電圧も下がります。上の波形図はオシロスコープの画面を見て書いたものですが、時間の読取りは目分量なので正確ではないかもしれません。
図2がこのICを使うときの基本回路です。簡単ですね。圧電スピーカーはプラス側につないでもマイナス側につないでもどちらでも同じように鳴ります。それほど大きな音ではありません。消費電流は音に合わせて変化するので測定しにくいですが、テスタで測ると無音時0.14mA、音が出ているとき0.18mAくらいでした。以下に記す電流値もだいたいの目安と考えてください。
図3は普通の8Ωスピーカーをつなぐ回路です。AとBはコンデンサを介してスピーカーをつないだもので、消費電流は最大で0.84mAくらいです。CとDは抵抗を通してスピーカーをつなぐ回路です。Cの回路では最大電流が2.7mAに増えます。Dの回路は無音時に電流が最大 (約6mA) で、音が出ると電流が減ります。音量はどの回路も圧電スピーカーのときとほぼ同じでした。コンデンサを入れた回路は少し硬い感じの音です。
図4は出力にトランジスタをつないで圧電スピーカーをドライブする回路です。A, Bは抵抗負荷の回路で、音量は圧電スピーカー直接のときとたいして変わりがありません。電流は最大で約1.6mAです。CとDはさくらいさんのサイトに出ていたもので、コレクタに抵抗ではなくコイルを入れた回路です。実験では4mHのRFCを用いました。こうすると抵抗のときより大きな音で鳴りました。ただ消費電流も14mAと大幅に増加します。いずれの回路も、圧電スピーカーの片側はプラスマイナスどちらにつないでもOKです。
図5はトランジスタで8Ωスピーカーを鳴らす回路です。これらは図4のCやDよりさらに大きな音が出るので、アラームとして実用になると思います。AとBはICの出力とトランジスタのベースを抵抗でつないだもので、無音時にはコレクタ電流が流れません。Aはコレクタに、Bはエミッタにスピーカーが入っていますが、どちらでも同じように聞こえました。最大電流はAの回路が17mA、Bの回路が15mAでした。
CとDはコンデンサを用いてAC結合にしたものです。この場合はバイアス抵抗が必要になります。こうすると最大電流は7mA前後に減りますが、無音時でも4mAくらい流れています。音量はA, Bと同じくらいです。
図6のAは2個のトランジスタをプッシュプル型 (コンプリメンタリって言うのかな?) に組んでスピーカーを鳴らす回路です。ベース抵抗が10kΩのままなので音量は図5の回路と同じくらいですが、最大電流は5mA程度に減りました。ベース抵抗を小さくすると音量をアップすることができます。Rを2.2kΩにしたときのコレクタ電流は12mAでした。Bは出力トランスを使う回路です。ベース抵抗が大きいのでコレクタ電流は最大で2mAくらいですが、それでもAの回路と同じくらい大きな音が出ます。
図7は音に合わせてLEDが光る回路のいろいろです。UM77TはLED1個くらいなら直接光らせることができるので、Aのように電流制限抵抗とともに出力端子〜GND間につなげばOKです。音が出ているとき点灯、無音のとき消灯という動作になります。上図BとCはトランジスタを用いて音を大きくする回路です。またDはトランジスタのコレクタにLEDを入れたもので、これでも同じように光りました。LEDが入ってもスピーカーからの音が小さくなることはありません。
図8はさくらいさんのサイトに載っていたアイディアで、1.5Vの電源で青 (または白) のLEDを点滅させる回路です。定数はオリジナルとは少し変えてあります。
ICの定格電圧は2V以上となっていますが、実際には1.5Vでも問題なく動作します (ただし圧電スピーカーを直接つなぐと音が小さい)。しかし青色LEDを点灯するには3V以上の電圧が必要なので、1.5Vの電池と青LEDを先ほどの図7-AのようにつないでもLEDは光りません。電源を3Vにしてもうっすら光る程度です。しかし図8の回路では、トランジスタのコレクタに入っているコイルの作用で信号が断続するたび電源電圧よりずっと高い電圧が発生します。これにより青や白のLEDでも明るく点滅させることができます。
この回路は青LEDの代わりに赤や緑のLEDを複数個直列につないでも点滅させることができます。図8の右にLEDを5個直列にした図を掲げましたが、私の実験では7個までOKでした。ただし個数が増えるにつれてLEDは暗くなります。
下に図8の回路のブレッドボード上の配線図と試作写真を掲げます。LEDが点灯した状態を写真に撮りたかったので、全体を少し暗くしました。
図8の回路で赤LEDを7個直列にしても光るということは、LED1個の順方向電圧を2Vとすると 2V×7=14V、つまり電源電圧の10倍近い電圧が発生していることになります。瞬間的にはもっと高い電圧が出ているかもしれません。そうなるとトランジスタの耐圧についての不安が出てきます。さくらいさんのサイトではその対策として、図9-1のようにトランジスタ保護用のコンデンサとダイオードを入れることを奨めています。長時間動作させるときはこのほうが安心だと思います。図9-1の回路でも青色LEDは問題なく点滅しますが、赤LEDに換えてみると2個までしか光りませんでした。それだけ電圧が下がったということですね。
参考までに、図8の回路と図9-1の回路の出力波形をオシロスコープで見た写真を出しておきます。黄色がSOS-ICの出力、赤がトランジスタのコレクタです。安物のオシロなので瞬間的に発生する高い電圧は測定できませんが、それでも左の保護回路なしの方はIC出力がHからLになる瞬間にコレクタ電圧がぴょんと高くなるのがわかります。右はコンデンサとダイオードを付けた回路で、波形のとがった部分がなくなって全体的に緩やかな波形になっています。
図10は図6-Bの回路の電源電圧を1.5Vにして青色LEDを点滅させるものです。これでもちゃんとLEDが点滅し、スピーカーからは十分な音量が出ます。この回路は図8ほどには高い電圧が出ないようで、赤LEDの点滅は4個直列が限度でした。
図11は、C-MOS版のタイマーIC・LMC555CNを使ってSOSサウンドの音程を変える回路です。IC1・UM77Tの出力をIC2・LMC555CNのリセット端子 (4番) に接続します。音を作るのはIC2の役目で、IC1はIC2の発振のタイミングをコントロールしています。タイマーICは7番と6番の間につなぐ抵抗によって発振周波数を変えられるので、ここをボリュームにして音程を調節できるようにしました。VR最小のとき100Hz、最大のとき3kHzくらいの音になります。
R1とC1はローパスフィルタです。これがないとIC1から出ている元の音 (2300Hz) と干渉して濁った音になってしまいます。また、IC2の出力に直接スピーカーをつないでも音が小さいのでトランジスタで増幅しました。ブレッドボード配線図と写真を下に掲げます。
図12はSOS信号を中波帯の電波に乗せて送信する回路です。LMC555CNで800kHzくらいの発振をさせておき、UM77Tの出力で発振をオンオフします。IC2の出力端子には10cm程度のビニール線を付けてアンテナにします。中波ラジオをそばに置いてダイヤルを合わせると、ラジオからSOS信号が聞こえます。ちゃんと変調がかかった音です。音が出ていないときは電波 (キャリア) も止まります。第2高調波の1600kHzも同じくらい強く受信できました。C1 (100pF) の代わりに中波用のバリコンを使えば送信周波数を変えることができます。