ブレッドボードラジオ発振回路の実験

水晶発振器の実験

 安価な水晶発振器を各種購入して動作させてみました。水晶発振器は水晶と発振回路が一体になって小さなパッケージに収められているもので、電源をつなぐだけですぐに安定した周波数で発振してくれます。
 今回実験したのは下の写真のものです。

写真1

1. 外形とピン接続

 今回の実験に用いた水晶発振器の外形とピン接続図を下に示します。周波数は、正方形のものが10MHzと1MHz、長方形のものが8MHzと4MHz、それに1.308MHzの小型の3端子の発振器です。四角いものはいずれも1個100円、3端子のものは5個で100円と格安でした。ピンの間隔はICと同じピッチになっているので、そのままブレッドボードに挿せて便利です。電源ピンの接続は74シリーズのデジタルICと同じです。
 4MHzの水晶発振器には「84-45」という表示があります。これは1984年の第45週(11月)に製造されたという意味ではないでしょうか。ずいぶん古いですね。でもちゃんと発振しました。

第1図

2. 動作試験

 下のような回路を組んで動作試験をしました。3端子の水晶発振器には資料が付いていて、型番はDOC-49S3、電源電圧は5Vとわかりました。四角いものは定格がまったく不明ですが、これらも5Vでテストしてみました。
 まず5Vの電圧をかけてちゃんと電波が出ることを確認し、それから電源電圧を変化させて消費電流と出力電圧を測定しました。電波が出ているかどうかの確認は、短波ラジオをそばに置いて受信してみるという原始的な方法です。かなり強い電波が出るので、特にアンテナをつながなくても十分受信可能です。
 出力電圧は、発振器の出力をショットキーダイオードで倍電圧整流して直流電圧計をつないで測定しました。数値そのものはあまりあてにならないので、大小の比較の目安程度に見てください。

第2図

10MHz (正方形4端子型)
電源電圧(DCV)2.53.03.54.04.5 5.05.5
消費電流(DCmA)1.01.41.82.32.9 3.44.1
出力電圧(DCV)1.82.22.63.13.5 4.04.6
1MHz (正方形4端子型)
電源電圧(DCV)2.53.03.54.04.5 5.05.5
消費電流(DCmA)0.61.01.31.82.3 2.93.5
出力電圧(DCV)1.51.92.22.63.1 3.53.9
8MHz (長方形4端子型)
電源電圧(DCV) 2.53.03.54.04.55.05.5
消費電流(DCmA) 6.98.91113151718
出力電圧(DCV) 1.62.02.22.63.03.43.7
4MHz (長方形4端子型)
電源電圧(DCV) 2.53.03.54.04.55.05.5
消費電流(DCmA) 12151821242629
出力電圧(DCV) 1.62.02.32.73.13.43.8
1.308MHz (3端子型)
電源電圧(DCV) 2.53.03.54.04.55.05.5
消費電流(DCmA) 0.50.81.01.31.72.02.4
出力電圧(DCV) 1.72.22.73.23.74.24.7

 
 消費電流、出力電圧ともに、電源電圧が高いほど大きくなります。長方形のものは消費電流が多いです。いずれの発振器も、電源電圧を2.5Vに下げても動作しました。ただ、電源電圧が低すぎると波形が歪んだりすることがあるかもしれません。ラジオで受信してもよくわかりませんが。
 この種の水晶発振器は方形波を発振するので、高調波(基本波の整数倍の周波数の電波)が強く出ます。たとえば1MHzを発振させると、2MHz、3MHz、4MHz、・・・・・と、1MHzおきに電波が受信できます。短波帯はおろか、FM放送の周波数でも高調波が受信できました。

3. 分周機能付き水晶発振器

 ついでに、EXO-3という分周機能付き水晶発振器もテストしてみました。上の写真で右端に写っているものです。この発振器は8ピンDIP型で、386や555といったICと同じ形をしています。値段は380円でした。

第3図

 EXO-3の特徴は分周器(周波数分割器)を内蔵していることです。端子の接続によって分周比を1⁄2から1⁄256まで任意に選択できます。分周比の設定は、上図右に示したように、5〜7ピンを電源のプラスにつなぐ(H)か、マイナスにつなぐ(L)かによって行ないます。今回用いたものは原周波数が12.8MHzですので、12.8MHzのほかに、6.4MHzから50kHzまでの中の1波が選択できます。

 EXO-3についても、他の水晶発振器と同様の方法で動作試験をしてみました。テスト回路は下記の通りです。S1a〜S1cとS2は、実際にはブレッドボード上でジャンパー線をつなぎかえることで対応しています。
 電源電圧を3V、4V、5Vにした時の消費電流と各分周波の出力電圧を測定しました。

第4図

電源電圧 3.0V電源電圧 4.0V電源電圧 5.0V
電流 mA出力 V電流 mA出力 V電流 mA出力 V
12.8MHz2.02.23.13.14.34.0
1⁄2 (6.4MHz)2.02.23.13.14.34.0
1⁄4 (3.2MHz)1.82.12.83.03.93.8
1⁄8 (1.6MHz)1.72.02.63.03.73.7
1⁄16 (800kHz)1.61.92.52.83.63.5
1⁄32 (400kHz)1.61.52.52.63.63.0
1⁄64 (200kHz)1.50.92.52.23.52.2
1⁄128 (100kHz)1.50.32.51.43.51.1
1⁄256 (50kHz)1.50.32.40.73.41.0

 消費電流も出力電圧もともに、分周比が大きくなる(周波数が低くなる)につれてだんだん小さくなっていきます。出力電圧が1V以下になるとラジオで受信しても電波が弱くなったと感じますが、出力端子に15cm程度のビニール線をつなげば大丈夫です。
 原周波数を分周すると、それに応じた高調波が受信できます。たとえば分周比を1⁄128にして100kHzを出力すると、中波帯からFM放送帯まで100kHzおきにずらっと高調波が並びます。ただし、出力周波数を800kHz以下にした場合、中波帯や短波の低い周波数では、偶数次(2倍、4倍、・・・)の高調波は弱いです。短波帯の中ほどより上では、偶数次・奇数次とも強く受信できます。

 (2006年3月4日)