ブレッドボードラジオ電源回路

トランスレスラジオの感電対策

 トランスレス式の真空管ラジオは電源トランスが不要なので、小型・軽量・安価にできます。しかしその反面、ACラインの片側がラジオのアース(B電圧のマイナス側)と直結されるため、シャーシに手を触れると感電したり、シャーシやアンテナ線などが建物の金属部分に接触して漏電したりといった事故が起きる可能性があります。
 ここでは、こうしたトラブルを未然に防ぐための方策について、私がラジオ関係の雑誌や書籍、ウェブサイトを読んでわかったことをまとめてみました。なお、私は以下のすべての方法を自分で試してみたわけではないので、本当に安全かどうかはわかりません。自作ラジオに応用する場合は十分に検討してからにしてください。

1. ACラインの極性

第1図  家庭に来ているAC100Vのコンセントには極性があります。2本のうち1本は地面とつながっています。それぞれの極の正式名称はわかりませんが、ここでは地面につながっている方をアース側(GND)、そうでない方をホット側(HOT)と呼ぶことにします。
 コンセントの穴をよく見ると左右で穴の大きさが違います。第1図のように左側が大きく、右側が小さくなっています。通常は左がアース側、右がホット側になっているそうです。「通常は」と書いたのは、我が家ではすべてのコンセントで極性が反対になっているからです。

 ホット側とアース側を同時に手で触れるともちろん感電しますが、ホット側だけに触れた場合でも、人体〜地面〜ACアース側と電流が流れるので、やはり感電します。トランスレスラジオで問題になるのはこのケースです。もっとも、この場合の感電の程度は環境によって差があるようで、私の部屋(木造家屋の2階和室)ではホット側に触っても何も感じません。

2. 極性の判別方法

 トランスレスラジオの実験をするには、まず自宅のACコンセントの極性を知っておく必要があります。極性の判別には検電ドライバーというものを使います。ホームセンターで300円くらいで売っています。
第2図
 実物の写真と図解を左に示します。マイナスドライバーの柄の中にネオン管を入れたような構造です。ドライバーの先をコンセントの穴に挿し、反対側の検知電極に指を触れたとき、ネオン管が光ればホット側、光らなければアース側です。ネオン管が光るということは人体をAC電流が流れたということですが、この場合はほんのわずかな電流なので、感電の心配はありません。余談ですが、ネオン管は直流でも光るので、この検電ドライバーはラジオのB電源回路のチェックにも使えます。

 ACラインの極性はテスタを使って調べることもできます。アナログテスタの場合、ACの高い電圧のレンジにセットし、テストリードの片方をACコンセントに挿し、他方を手で握ります。コンセントの両方の穴で試してみて、メーターの針が少しでも振れたほうがホット側です。私の部屋では、AC300Vレンジで20Vほど振れました。デジタルテスタを使うと、ホット側で40V、アース側で3Vくらいでした。

3. LEDを使用した検電器の製作

:検電器回路図  左はLEDを光らせる検電テスタの回路図です。「初歩のラジオ」で紹介されていました。2個のトランジスタはダーリントン接続でエミッタフォロワになっているので、入力インピーダンスは非常に高くなります。検知極をACコンセントのホット側に挿すとLEDが光ります。アース側の電極はありませんが、ケースを手で持ったときの人体と回路の間のわずかな静電容量によって結合するのだと思います。
 この検電器は非常に高感度で、テレビのブラウン管や化繊の洋服に発生した静電気も検知できます。
 ブレッドボード上に試作してみましたので、実体図と写真を下に掲げます。

:検電器実体図 写真

4. ACプラグに印を付ける

第3図  上に書いたようにACラインの片側は地面につながっていますので、トランスレスラジオをアルミシャーシに組んでB電圧のマイナス側をシャーシに直接アースした場合、ACプラグの向きによってはシャーシに手を触れた瞬間電撃を受けます。感電するのは、BマイナスがACラインのホット側になったときです。また、この場合シャーシの置き場所によってはシャーシから直接地面へ電流が流れて漏電遮断器が作動することがあります。それと、左図のようにACラインの片側だけにスイッチがある場合には、スイッチを切ってあってもシャーシに触ると感電してしまいます。

 これを防ぐには、ACコンセントとラジオの電源プラグの両方に極性を示すマークを付け、電源プラグをコンセントに挿すとき、常にBマイナスがACラインのアース側とつながるようにします。ACコードによっては、片側に白線が入っていて区別ができるものもあります。
 当サイトで紹介している「真空管ラジオ用電源器(その1)」や「(その2)」のような機器を使う際にもこうした配慮が必要です。

5. 極性チェック端子を設ける

第4図  これは先に紹介した検電ドライバーをラジオに内蔵するものです。シャーシアースする側にネオン管をつなぎ、その片側をチェック端子としてパネル面に出します。ACプラグをコンセントに挿したら、電源スイッチを入れる前にチェック端子に指を触れてみます。ネオン管が光らなければそのままラジオのスイッチを入れても大丈夫ですが、もしネオン管が光った場合は、Bマイナスがホット側になっていますから、ACプラグの向きを反対にします。

 下の第5図はチェック端子付きラジオのバリエーションです。1番はネオン管をラジオのパイロットランプと兼用にするアイディアです。この場合、ネオン管と直列に抵抗を入れる必要があります。「AC100V用ネオンランプ」として市販されているものは初めから直列抵抗が内蔵されています。極性チェックのみにネオン管を使用する場合はごくわずかな電流しか流れないので、直列抵抗はあってもなくても同じです。
 2番はラジオのアンテナ端子がチェック端子を兼ねているものです。これならチェック端子が目立たなくて良いと思います。

第5図

6. コンデンサを介してシャーシにアースする

第6図  昔からよく用いられる方法に、ラジオのアースラインとシャーシの間にコンデンサを入れて絶縁するというのがあります。B電源のマイナス側は直接シャーシにアースせず、すべてリード線でつないで配線します。そして、アースラインのどこか一個所でコンデンサを介してシャーシにつなぎます。こうすることで、ACプラグの向きに関係なく、シャーシに触れても感電することはありません。ただ、気軽にシャーシアースできないので配線は多少面倒になります。もっとも、バリコンや高周波のバイパスコンデンサなどは直接シャーシにつないでもかまわないと思います。

 このコンデンサの容量値は、50〜60Hzの交流に対しては高い抵抗値を持つが高周波はよく通すということで、0.01〜0.1μF程度のものが使われます。容量が大きいほうがシャーシアースの効果は高くなりますが、そのぶん感電しやすくなります。
 コンデンサの耐圧は、AC100V(DCなら280V)では十分とはいえないようです。現在はACラインにさまざまなノイズが乗っているので、瞬間的には100Vよりはるかに高い電圧のパルスが発生するそうです。メーカーの製品では、こういう場所に使われるコンデンサには特別に厳しい規格が適用されます。自作ラジオでもなるべく耐圧の高いものを用いるのが安全だと思います。

第7図  ところで、左図のように抵抗とコンデンサが並列になっている回路もあります。説明記事によるとこの抵抗は「コンデンサに適当なリークを持たせるため」とのことです。私にはよくわかりませんが、上に書いたような高い電圧が加わったときコンデンサを保護する目的でしょうか。

(追記 2006年4月20日)
 上記の件について、M.H.氏よりメールをいただきました。コンデンサと並列につながっている抵抗は、ACプラグを抜いたときコンデンサにたまっている電荷を放電させるためのものだそうです。M.H.さんありがとうございました。
(追記ここまで)

7. ラジオ全体をプラスチックケースに入れる

 メーカー品のトランスレス5球スーパーは皆プラスチックケースに入っていました。つまみもすべてプラスチック製で金属部分はまったく露出していません。こうしておけば感電する心配はなくなります。ACプラグの極性に気を使うこともなく、B電源のマイナス側も直接シャーシにアースできます。製作者以外の人(家族など)がラジオを使用する場合は、こうしておくのが一番安全です。
 ただし、点検や修理で中をさわる時は、まずシャーシにAC100Vが来ていないか確かめる必要があります。

8. シャーシアースしない、シャーシを使わない

 どこにもシャーシアースをせず、完全にアースが浮いた状態で製作してある例も見かけます。すなわち、シャーシを単なる「台」として使うわけです。これなら感電もへったくれもありません。真空管回路はインピーダンスが高い、つまり、トランジスタ回路に比べて電圧が高くて電流が少ないので、アースが効いていないとノイズを拾いやすくなりますが、増幅度の低いラジオならこういう方法も有効かもしれません。また、シャーシアースしないのであれば、B電源をブリッジ整流や両波倍電圧整流によって得ることも可能です。
 このやり方をもっと進めると、木の板やプリント基板上に真空管ラジオを組むというスタイルになります。トランジスタラジオと同じですね。この場合は太い導線をアース代わりに用いたり、基板上のアース面を広く取るなどの対策が採られるようです。
 私がいつもやっているブレッドボードラジオもこれと似たようなものです。一応ボードの下にアルミ板を敷いていますが、ややノイズに弱く、発振しやすい欠点があります。

9. 入力端子の絶縁

 上記6〜8の方法では、シャーシに触って感電する心配はありませんが、ACプラグの向きによってはラジオのアースラインにACのホット側がつながります。この状態でラジオのアンテナ・アース端子、あるいはアンプの入力端子に手を触れるとやはり感電してしまいます。またこれらの端子に別のトランスレス機器を接続した場合、AC100Vをショートしてしまうおそれがあります。
 こうした事故を防ぐため、各入力端子にコンデンサを接続した回路を見かけます。下にラジオとアンプの回路例を示します。

第8図

10. 絶縁トランスを使う

第9図  トランスレスとは言えなくなりますが、究極の安全策です。
 絶縁トランスとは、一次側二次側とも100Vのトランスです。これによってACラインと絶縁された100Vを取り出すことができます。二次側にACコンセントを付け、ラジオの電源プラグはここへつなぎます。左図のようなものをケースに入れて独立させ、じゃまにならない場所に置いておけば、延長コンセント(テーブルタップ)のような感覚で使えて便利です。プラスチックケース入りの5球スーパーを修理する際も、ここのコンセントから電源を取れば安心です。トランスの容量は30VAあれば5球スーパー程度までまかなえると思います。「絶縁トランスユニットの製作」に製作例がありますので、よかったら見てください。

 下はヒータートランスを2個使用した回路です。容量の大きなヒータートランスを絶縁トランス代わりに使用し、AC6.3Vのラインをラジオまで引っぱってきます。ラジオ側では一次と二次を逆にしたヒータートランスでAC100Vを取り出し、これを整流してB電圧にします。下の例のように6.3V,1Aのヒータートランスを用いて6.3V側に1A流した場合、トランスの損失を考えなければブリッジ整流で30mA程度の直流電流が取り出せる計算です。真空管のヒーター電源は6.3Vラインから直接取ります。

第10図

 (2006年2月27日 初稿)
 (2006年4月20日 第7図の説明文に追記)

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