ブレッドボードラジオ発振回路の実験

ネオン管発振回路

 ネオン管を使った発振回路の実験をしました。これも弛張発振の一種で、動作原理は別項「トランジスタのC-E逆接続」と似ています。

1. ネオン管の基本的特性

第1図

 まず初めに、第1図の回路でネオン管の基本的な性質を調べました。

 ネオン管を点灯させるためには100Vくらいの直流電源が必要ですので、別項「真空管ラジオ用電源器(その1)」のB電源を使用しました。第1図のC1より左側がこの電源器内部の回路になります。電源器の直流出力電圧はAC100Vラインの電圧変動にしたがって絶えず変動するので、定電圧放電管VR105MTによって安定化しました。

 最初はボリュームのスライダーをマイナス側(回路図で言うと下側)いっぱいに回しておきます。この状態ではネオン管は点灯しません。Vin, Vneともに54Vで、電流はまったく流れません。ここからボリュームをプラス側へ回してネオン管に加える電圧を少しずつ上げていくと、Vinが68Vになったところでネオン管が点灯し、その瞬間、Vneが49Vに下がりました。いったんネオン管が点灯すると、その後はVinを変化させてもVneはほとんど変化しません。Vinが60VのときVneは49.2V、Vinが100VのときVneは49.7Vでした。

 同時に購入した別のネオン管を試験してみたところ、こちらはVinが70Vになった時点で点灯し、その後はVinが60VのときVneは49.6V、Vinが100VのときVneは50.5Vでした。

 今回の実験に用いたネオン管はねじ込み式の豆電球と同じ形をしています。内部は、棒状の電極が2本並行に取り付けられています。ネオン管が点灯すると、片方の電極の周囲だけがオレンジ色に光ります。ネオン管にかかる電圧が高くなる(ネオン管に流れる電流が多くなる)と、棒状の電極全体が光ります。電圧が低いと一部分だけが光ります。ネオン管は交流でも点灯させることができますが、この場合は両方の電極が光ります。

 ネオン管は、入力電圧が変化しても一定の電圧を維持するところは定電圧ダイオードに似ていますが、最初点灯させるのに少し高い電圧を必要とするなど、むしろ定電圧放電管に近いと言えます。弛張発振を起こすには後者の性質がポイントになるようです。

2. ネオン管1個の点滅回路

第2図,第3図

 第2図左側がネオン管発振回路です。第1図の実験と同じ電源器をつなぎました。定電圧放電管は使用していません。電流がほとんど流れないので電源器の出力電圧は140Vと高くなっています。

 ネオン管の他には抵抗とコンデンサが1個ずつという非常に簡単な回路ですが、たったこれだけでネオン管を点滅(フラッシュ)させることができます。図の定数で、約0.8秒周期で点滅しました。点滅周期はRおよびCの値に比例します。同図右側は抵抗とコンデンサを並列にしたものですが、これでも同じように動作します。点滅周期も同じでした。

 第3図はネオン管の代わりに定電圧放電管を点滅させるものです。第1図の実験に用いたVR105MTを使用しました。点滅周期は約1.0秒です。VR105MTは紫色に放電します。放電する面積が大きいので点滅する様はなかなか豪快ですが、こんな使い方をすると放電管が傷むかもしれません。

3. ネオン管2個の交互点滅回路

第4図

 第4図はネオン管2個の交互点滅回路です。点滅周期は1.3秒になりました。この回路も点滅周期はRおよびCの値に比例します。つまりRまたはCを大きくすると点滅がゆっくりになります。R1とR2の値が異なる場合は、左右のネオン管の点灯時間に差ができます。例えばR1をR2より小さくすると、NE1の点灯時間が長くなります。

 この回路のブレッドボード上の配線図と試作写真を下に示します。横に置いてあるのが電源器です。

実体図4 写真4

第5図

 第5図はネオン管2個交互点滅回路のバリエーションです。左側は抵抗とネオン管の位置を入れ替えたもので、第4図の回路とまったく同じように動作します。同図右側のように配線すると、2個のネオン管が同時に点滅(フラッシュ)します。周期は約0.7秒でした。交互点滅のときより明るく光るように見えます。

第6図

 第6図も交互点滅回路ですが、コンデンサの容量値が小さいので点滅が非常に速くなり、肉眼では両方とも連続点灯しているように見えます。この状態でプッシュスイッチを押すと、点滅が止んでどちらか一方だけが点灯します。スイッチを放すと元の状態に戻ります。

 点滅周期を遅くして確認したところ、スイッチを押した瞬間に点灯していた方のネオン管がそのまま点灯し続けることがわかりました。この回路は、ゲームの先攻後攻を決めるための「ジャンケンマシン」、あるいは「念力ゲーム」(??)という名前で古いラジオ雑誌に登場します。

4. ネオン管発振による音出し回路

第7図

 第7図は、コンデンサを小さくして可聴周波数を発振させる実験です。クリスタルイヤホンで音を聞くようにしました。3通りの回路を試してみたところ、どれでも同じように動作しました。発振周波数は図の定数で470Hzでした。

 発振周波数はR1およびCの値に反比例します。つまり、R1やCが大きいほど低い音になります。ただ、R1を小さくすると調整範囲が狭くなりました。試作回路ではR1を3.3MΩにしていますが、これを1MΩにすると、C=0.01μFのとき350Hzで発振しますが、Cをそれより小さくすると発振が停止してしまいます。

 イヤホンの音量はR2で調節できます。R2を大きくするほど音も大きくなります。音質は機械ブザーに似ています。あまりきれいな音ではありません。第7図左上の回路のボード上の配線と試作写真は下記の通りです。

実体図7 写真7