ブレッドボードラジオ発振回路の実験

PUTを使った実験(その1)

 PUTとは、プログラマブル・ユニジャンクション・トランジスタの略で、サイリスタの仲間です。って言ったって何の説明にもなりませんね。言ってる本人もよくわかっていません。
 ラジオ雑誌の製作記事にときどき登場するので、基本的な性質について少し調べてみました。実験に使用したのはN13T-1という型番のものです。

第1図

Va(V)0.600.650.700.750.80 0.850.90
Ia(mA)00.10.31.34.0 10.021.2

 PUTにはアノード(A)、カソード(K)、ゲート(G)の3本の電極があります。外観は2SC1815などのトランジスタと同じです。
 まず、第1図のように、ゲートを開放にして、アノード・カソード間に電圧を加え、どれくらい電流が流れるか調べました。最大定格がわからないので、電流が流れすぎないように68Ωの抵抗器を直列に入れました。
結果は上右の表の通りで、普通のダイオードと同じような性質を示しました。なお、逆方向の電圧をかけても電流はほとんど流れません。

第2図

 第2図は、ゲートに抵抗で分圧したプラスの電圧をかける実験です。これが普通の使い方のようです。
 まず、R1=R2=4.7kΩとして、VRのスライダーはマイナス側いっぱいにまわしておきます。つまりVa=0Vです。この状態ではIaもIgもゼロで、Vgは1.56Vになっていました。1.5Vちょうどにならないのは抵抗器の誤差のせいです。
 ここからVRを少しずつ回してVaを徐々に上げていきます。Vaが0.6Vを超えてもIaはゼロのままですが、Vaが2.00Vになった瞬間にA-K間が導通して、Iaが11.8mA流れました。それと同時にVaは0.86Vに下がりました。このとき、Vgは0.07V、Igは0.6mAでした。
 Vaが0.86VのときIaが11.8mAというのは、第1図の回路で実験したA-K単独の特性とほぼ同じです。A-K間が導通した後さらにVaを上げていくと、同実験と同じようにIaが増加します。Vaを下げればIaも減少します。ただし、Vaを0.6V以下にすると初期状態に戻り、再びIaを流すためにはVaをいったん2V以上にしなければなりません。
 また、A-K間導通後にIaを増減させても、Igはほとんど変化しません。それと、A-K間導通後にゲート端子を開放にしても、A-K間は導通したままで、何も影響を受けませんでした。

 次に、R1とR2の比率を変えて同じ実験をしました。

R1=3.3kΩ、R2=6.8kΩのとき。
 Vgの初期値=2.08V
 Va=2.52VでA-K間導通、Va=0.90V、Ia=19.8mAになる
 このとき、Vg=0.08V、Ig=0.8mA

R1=6.8kΩ、R2=3.3kΩのとき
 Vgの初期値=1.03V
 Va=1.47VでA-K間導通、Va=0.83V、Ia=6.3mAになる
 このとき、Vg=0.06V、Ig=0.4mA

R1=10kΩ、R2=1kΩのとき。
 Vgの初期値=0.30V
 Va=0.76VでA-K間導通、Va=0.72V、Ia=0.5mAになる
 このとき、Vg=0.06V、Ig=0.2mA

 この実験で、PUTのA-K間が導通するのは、VaがVgの初期値より約0.45V高くなったときである、ということがわかりました。いったんA-K間が導通してしまえば、その後はVaが0.6V以下にならない限り普通のダイオードと同じような性質を示します。また、A-K間が導通する電圧は、R1とR2の比率を適当に設定することで任意にコントロールできます。PUTのP(プログラマブル)とはそういう意味なのでしょう。
 なお、R1を極端に大きく、R2を極端に小さくして、A-K間導通時の電圧が0.6V以下になるように設定すると、PUTとして動作しなくなります。たとえばR1=10kΩ、R2=100Ωにすると、ゲートを開放にしたときと同じような特性になります。ただしIaは第1図の実験のときより若干多くなりました。また、このときIgは逆方向に(ゲートからマイナスへ)流れます。

 R1とR2がともに10kΩ、あるいはR1とR2がともに100kΩのケースも実験してみました。抵抗値が大きくなるとA-K間導通時のIgが減少するだけで、PUTとしての動作そのものには変化がありませんでした。この時点では、ゲート端子には所定の電圧がかかってさえいれば抵抗の組み合わせは何でもいいのかと思ったのですが、実際に応用回路をいろいろ試してみた結果、R1とR2の選び方はけっこう難しいということを知りました。
 詳しくは次項「PUTを使った実験(その2)」を見てください。

(以下、2005年9月11日に加筆)

第3図

 アノードにプラスの電圧をかけておいて、ゲート電圧を変化させるとどうなるか実験しました。
 第3図左側が最初の状態です。5kΩのボリュームはプラス側(回路図で上側)いっぱいに回しておきます。R1およびR2は電流を制限するためのものです。この状態で電源をつないでも、PUTにはまったく電流が流れません。したがって、Va,Vg1,Vg2のいずれも電源電圧と同じ(3.13V)です。
 この状態からボリュームを徐々にマイナス側へ回してVg1(Vg2)を少しずつ下げていったところ、Vg1(Vg2)が2.68Vになった瞬間、A-K間が導通してVaは0.85Vになり、Vg1は0.07V、Vg2は1.17Vに下がりました。
 ゲート電圧がアノード電圧より約0.45V低くなるとA-K間が導通するというのは第2図の実験と同じです。A-K間導通後は、ボリュームの位置を変えても、またゲートを切り離しても、A-K間は導通したままで、アノードからカソードへの電流も変化しませんでした。

 ところで、PUTのアノード・カソード間導通時、Vg1,Vg2の値からみてゲートからカソードへは1mAの電流が流れています。ここで、ボリュームを再びプラス側いっぱいまで戻すと、Vg1は0.09V、Vg2は3.09Vになり、ゲート電流は3mAに増えます。しかしこれはR2で電流を制限しているためで、R2がないともっと大きな電流が流れてしまいます。前の実験のときはゲートと電源のプラス間に常に抵抗がつながっていたので、ゲート電流の大きさはあまり意識していませんでした。今回の実験では、最初R2なしでやっていたら途中でPUTがものすごく熱くなってしまい、あわててR2を挿入した次第です。
 反対にボリュームをマイナス側いっぱいに回すと、Vg1は0.06V、Vg2は0.42Vでゲート電流は0.36mAになりました。

 (2005年7月15日 初稿)
 (2005年9月11日 第3図以降を追加)