「ノスタルジア・ラジオ・コレクションズ」というシリーズの中のひとつ "N-335" というラジオについて調べました。このシリーズは往年の真空管ラジオのミニチュアモデルで、中身はICを使ったAM-FMラジオになっています。最近、通販ショップやネットオークション等でよく見かけます。N-335のオリジナルは1951年イタリア製の "Imca IF 51 Nicoletta" というラジオだそうです。
上はN-335の正面とダイヤルの拡大写真です。外形寸法は横幅135mm、高さ80mm、奥行50mmです。電源は単3電池2本の3V、ICを3個使用したAM-FMラジオです。パッケージには"MADE IN P.R.C." と書いてありました。"P.R.C."って「中華人民共和国」のことでしょうか。製造元は香港の "Nostalgia Limited" いう会社、輸入販売は日本の "FIVEFORCE LTD." という会社です。
ツマミが4個見えますが、左から電源スイッチ兼音量ボリューム、飾りのツマミ、バンド切替、同調ツマミとなっています。デザイン優先で全体を同じ縮尺で小さくしたのか、ツマミの直径は8mmしかありません。なのでチューニングはやりづらいです。ダイヤルの周囲にごちゃごちゃ書かれた文字は地名 (当時の放送局の所在地?) のようです。
AMバンドの感度は悪くありません。日中でも隣県の放送が入感します。でも選択度はイマイチで、ローカル局どうし少し混信してしまいます。回路については後で書きますが、AMバンドは3端子ICによるストレートタイプです。FM放送は付属のビニール線アンテナを伸ばして聞きます。こちらも普通のポケットラジオ並みの感度はあると思います。ただ局間ノイズが少し耳障りに感じます。
写真では左右にスピーカーグリルが見えますが、これは飾りでして、実際のスピーカーは背面に付いています。口径は5cmです。また、消費電流は無信号時でも11mA、ローカル局を受信して大きな音を出すと30〜50mAになります。これだと電池はあまり長く持たないでしょう。外観からいっても、本機は放送を聞くためというより、アンティーク風のインテリア小物として飾って眺めるためのラジオと言えそうです。
上は本機内部の写真です。簡単な作りの割にネジがたくさんあって分解するのは面倒です。ツマミはボリューム用とチューニング用の2個だけが外れます。あとの2個はパネル側に固定されています。内部にはだいぶ空間があります。裏ブタにスピーカーと電池ボックスが付いています。
下はダイヤルメカのようすです。左の写真は正面から見たところ、右の写真は上がラジオの前面、手前が上面になります。バリコンのシャフトとダイヤル指針は直結で、これとチューニングノブがギアで連結されています。この構造だとツマミを右に回すとダイヤル指針は左に回転するので、慣れないと変な感じです。
上記はこのラジオの回路図です。基板の裏側に付いているICがあり、その下はプリントパターンが見えないので、一部は推測で書きました。FM受信用 (IC1)、AM受信用 (IC2)、そしてパワーアンプ (IC3)の3個のICから成っています。
FM用のIC1は表示が消えているので型番がわかりません。何かで削って故意に消したようにも見えます。16ピンフラットパッケージのICですが、回路から察するに、TDA7000やLA1800と同じタイプではないかと思います。AMバンドは3端子のTA7642が使われています。スピーカーアンプはTDA2822Mです。
(追記。FM用のICはD7088もしくはその同等品ではないかと思います。詳しくは「N-338」のページを見てください。2008年7月13日。)
コイルはL1がおそらくFM用OSCコイルで、0.8mm径のエナメル線を4回巻いた空芯コイルです。直径・長さともに5mmくらいです。L2はAM用のバーアンテナです。コアの長さは38mm、二次巻線のあるタイプです。バリコンは2連の親子型が使われています。FMバンドはL1とVC2 (容量の小さい方) で局発側のみ同調を取ります。アンテナ側は非同調です。AMバンドはL2とVC1 (容量の大きい方) で同調を取るストレート方式です。バリコンの容量は調べていませんが、普通のAMスーパー用のように見えます。これでも2バンドラジオにできるというのは自作の参考になります。
低周波増幅回路はTDA2822MをBTL接続にしてスピーカーを鳴らします。このICは丸七系100円ショップの「ボリュームアンプ」にも使われているそうです。L3とL4は、直径3mm、長さ3mmの小さいトロイダルコアに4回巻したコイルです。高周波チョークコイルでしょうか。L3は裏ブタの電池ボックスの横に固定されています。
上の写真はプリント基板の表と裏です。IC1 (FM用IC) とSW1 (バンド切替スイッチ) は基板の裏側から取り付けられています。基板表側、左上にあるトランジスタのような形のものがAM用IC (IC2) 、右上の黒い四角がIC3です。バリコンとボリュームの間に見える黒いものはFM用局発コイルL1です。黒く見えるのはコアではなくてウレタンかスポンジのような柔らかい物質です。型崩れしないように挟んであるのでしょう。全体がパラフィンで固めてあります。基板裏側 (右の写真)、ボリューム右下に付いているのがIC1です。
下に実体配線図を掲げます。部品取付面 (上左の写真の向き) から透視した形で書きました。