別項「N-335」と同じ「ノスタルジア・ラジオ・コレクションズ」シリーズの中からもうひとつ "N-338" についてレポートします。回路はN-335と同じですが、機械的な構造はかなり違っています。
上にN-338の正面とダイヤルの拡大写真を掲げます。オリジナルは1937年ドイツ製の "Schaub Super 229" というラジオだそうです。ダイヤル面が斜めになった独特の形状です。外形寸法は横幅120mm、高さ100mm、奥行50mmです。2つのツマミは左が電源スイッチと音量ボリューム、右がチューニングです。中身はICを使用したAM-FMラジオで、バンド切換スイッチは背面に付いています。電源は単3電池2本の3Vです。
ダイヤルの一番外側にはヨーロッパ各地の地名、その内側にはドイツ国内の地名が記されています。周波数の代わりに放送局の所在地を目盛にしているのだと思います。これを見るとオリジナルはダイヤルの針が300度くらい回転したようですね。N-338はさすがにそこまでは再現できてなくて、ダイヤルは180度弱しか回りません。
聞こえ方はN-335と同じです。中波・FMともローカル局はほぼ問題なく受信できます。N-335に比べるとツマミがやや大きくて (直径12mm) スムーズに調節できるのと、スピーカーが前面についているので、こちらのほうが実用性は高いと思います。FMバンドは付属のワイヤアンテナを伸ばして聞きます。
上左は本機内部の写真です。ダイヤル板に合わせて基板も傾いています。音量ボリュームは別基板になっています。電池ボックスは裏蓋に付いています。
N-335のダイヤルはギアドライブになっていてちょっと驚きましたが、本機はなんと糸かけ式のダイヤルです (上右の写真)。ちゃんとスムーズに動きます。このシリーズの最大のウリはもちろん見た目ですが、ダイヤルメカのユニークさも見逃せません。この価格 (N-335とN-338の2台セットで1000円ちょっとでした) のラジオでダイヤルにここまで凝っているのは珍しいと思います。
上記はこのラジオの回路図です。N-335とほとんど同じです。違いといえば、VC2周りのコンデンサ (C14, C15) の定数、あとバーアンテナの二次巻線の接続が反対になっていることくらいです。詳細はN-335のページを見てください。FM受信用のIC1はやはり型番が見えずらいですが、末尾が「88」であることだけはわかりました。
上の写真はプリント基板の表と裏です。使われている部品はN-335と同じですが、基板上の配置はだいぶ違います。IC1が基板の裏側に付いているのは同じです。VC1 (AM用バリコン) の端子はプリント基板にはハンダ付けされていません。バリコンの端子とバーアンテナの白リード線が基板表側で直接接続されています (N-335もそうなっていた)。
下に実体配線図を掲げます。部品取付面から透視した形で描いてあります。
(以下、2008年7月13日に追記)
FM用のIC1について、末尾の「88」を手がかりに調べてみたところ、「D7088」というICを見つけました。データシートに載っている外形図や応用回路例から見て、IC1はこれ (もしくはその互換品) ではないかと思います。IFは70kHzとのことです。下に、データシート記載のFMラジオの回路図を掲げます。これは押しボタンスイッチによるオートスキャン方式のラジオのようです。なお、参照した回路図がピンボケだったのでCR定数が正確に読み取れません。