ブレッドボードラジオ真空管・再生検波1

いろいろな再生検波回路

 3極管とトランジスタ用バーアンテナを使ってできる再生検波回路をいろいろ試してみました。

 下記の実験では、特に断らない限り、6AQ6-6C4 2球ラジオの回路をベースにしています。検波管は6AQ6の3極部、バーアンテナはSL-55GT、バリコンはTR用ポリバリコン、B電圧は+135V前後です。

 どの方式でもちゃんと再生がかかり、ローカル局の受信には差し支えありませんでした。しかし、中には同調周波数が下がって中波の上のほうがカバーできないものや、再生発振状態に入ると耳障りな音が出るものもありました。今回はあまり深入りしませんでしたが、こうした欠点はCR定数やコイルの巻数の調節によってある程度改善できるのではないかと思います。

第1図,第2図

 第1図は検波管プレートから同調回路にフィードバックさせ、バリコンで再生量を調節する方式です。日本のラジオ雑誌等で最もよく見かける回路です。バリコン容量が大きいほど再生量が増えます。高い周波数ほど再生が起きやすいです。
 第2図は再生バリコンを検波管プレートと再生コイルの間に入れたものです。バリコンのステ−タ側がプレート、ロータ側が再生コイルにつながるようにします。逆につなぐとボディエフェクトを生じます。

第3図,第4図

 第3図はプレート回路の途中に再生コイルが入っているものです。再生バリコンは高周波をバイパスする形になるので、バリコン容量が小さいほど再生量が増えます。アメリカのラジオ本にはなぜかこの方式が多いです。
 第4図は同調コイルの一部を再生コイルとして使用する方法です。独立した再生コイルが不要になるメリットがありますが、同調コイルの巻数が減るので、270pFのバリコンでは中波の下までカバーできません。それで340pFのバリコンを使用しました。2番と同じく、再生バリコンの極性に注意する必要があります。

第5図,第6図

 第5図は検波管のカソードから帰還させる方式です。プレートとカソードは位相が反対なので、再生コイルのつなぎ方も反対になります。バリコンの容量が小さいほど再生量が多くなります。
 第6図は同調コイルの中間タップをカソードにつなぐ方式です。動作は5番と同じです。これなら単巻コイルと270pFのバリコンでOKです。ただし、再生発振が起きるとビ〜と耳障りな音が出ます。

第7図,第8図

 第7図は単巻線のバーアンテナPA-63Rで6番の回路を試してみたものです。同じように動作します。
 第8図は、再生バリコンを使わず、電源電圧をVRで可変して再生を調節する回路です。再生の原理は1番の回路と同じです。電圧が高いほど再生量が増えます。再生発振が起きるVR位置は周波数によって大きく違うので、中波の全範囲で再生がかかるようにC(68p)の最適値を選ぶ必要があります。

第9図,第10図

 第9図は3番の回路をVR調節式に変えたものです。プレートにC(68p)をつながないと再生がかかりません。再生発振が起きるVR位置は周波数にかかわらずほぼ一定しています。今回のケースではアース側から25%ぐらいのところです。
 3番や9番の方式は、再生発振が起きるバリコンあるいはボリュームの位置が、受信周波数によってあまり変化しないという利点があります。しかし、これらの回路では再生コイルにB電流が流れるので、コイルの巻線間の絶縁に注意する必要があります。TRラジオ用のバーアンテナではちょっとまずいかもしれません。
 第10図は4番の回路とVR調節の組み合わせです。バリコンには340pF程度のものが必要です。8番と同じく、再生発振の起こるVR位置は周波数によって大きく変化します。

第11図,第12図

 第11図はカソードから帰還させ、VRで再生調節する方式です。操作感は9番と同じような感じです。この回路と次の12番は、再生を調節したときの同調点のずれが少ないということで、日本のラジオ雑誌では短波ラジオによく用いられています。一方アメリカでは短波でも3番や9番が多いです。
 第12図はカソードタップ+VR調節という回路です。第11図と同じですが、コイルがひとつで済む利点があります。今回実験したVR調節の再生回路はどれも、プレート電圧が低くなるにつれて低音が出なくなる傾向があります。

第13図,第14図

 第13図は再生コイルをVRでショートする方式です。VR値が大きいほど再生量が増えます。受信周波数が若干下へずれるので。長いアンテナをつなぐと中波の上端までカバーできません。
 第14図は第13図と似ていますが、VRのスライダーをコンデンサでアースしています。スライダーがプレート側 (回路図で左側) へいくほど再生量が増えます。この回路は同調周波数が大幅に下がります。上の回路で受信周波数の上限は1500kHzぐらいです。バーアンテナの1〜5間にバリコンをつなぐとなんとか中波帯をカバーします。

第15図,第16図

 第15図は第1図の回路のバリコンをそのままボリュームに変えたものです。バリコンに比べると調節がデリケートな感じです。抵抗値が小さいほど再生量が増えます。第14図の回路よりもっと周波数が下がります。上のように1〜5間にバリコンをつないでも1550kHzまでしか受信できませんでした。
 第16図は第3図の回路のボリューム版です。抵抗値が小さいほど再生量が増えます。第15図の回路ほどではありませんが、これも受信周波数が低くなります。

 再生調節の方式としては、このほかに同調コイルと再生コイルの結合度を機械的に変化させるやり方がありますが、工作が大変です。また、直熱式の電池管でフィラメント電圧を上げ下げすることで再生調節している回路を見たことがあります。

 (2004年7月19日)

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