ブレッドボードラジオ真空管・再生検波1

6BH6-6AK6 バリキャップ同調 2球ラジオ

 バリコンの代わりにバリキャップ(可変容量ダイオード)を使ってチューニングする2球ラジオを作りました。バリキャップは中波用の1SV149を用いました。

1. 元の2球ラジオの回路

第1図

回転角度 %周波数 kHz
0510
10535
20575
30615
40670
50735
60820
70955
801140
901450
1001650

 上記は別項「6BH6-6AK6 2球ラジオ」の回路図です。今回はこのラジオのバリコンをバリキャップに換えてみました。比較のため、270pFのポリバリコンを使ったときの回転角度と周波数の関係を調べてみました。結果は左の表の通りです。アンテナは30cmのビニール線をつなぎました。これくらいのアンテナでローカル局は十分な音量で鳴ります。

 ポリバリコンは175度くらい回転しますが、左の表では回転角度はパーセントで表わしてあります。0%のときが最大容量、100%のときが最小容量です。実際の静電容量については「ポリバリコンの回転角度と容量値の関係」を見てください。

 受信範囲は510〜1650kHzで、中波帯を余裕を持ってカバーしています。もっとも、同じ構成の2球ラジオでも、検波回路の定数やアンテナの長さなどによって受信範囲は変化します(特に受信周波数の上限が変動する)。また、バリコンの性質として、容量の小さいところでは周波数の変化が急になって同調が取りにくいです。

2. バリキャップ1個の回路

第2図

回転角度 %周波数 kHz Vd DCV
05150.55
105200.66
206202.1
307753.4
409904.9
5011956.2
6013107.6
7013959.0
80143010.5
90145011.6
100145011.6

 まずバリキャップを1個だけ使う回路を試してみました。上がその回路図です。真空管ラジオでバリコンの代わりにバリキャップを使うとなると、これだけの部品が必要です。これが一番の欠点ですね。

 バリキャップ1SV149と680pFのコンデンサを直列にしてバリコンの代わりにつなぎます。バリキャップには逆方向の電圧を加える必要があるので、真空管のヒーター電源を倍電圧整流し、12Vのツェナーダイオードで安定化しました。

 100kΩのボリュームVR11でバリキャップにかける逆電圧を調節するとバリキャップの静電容量が変化するので、同調周波数を変えることができます。逆電圧が高いほど静電容量が小さくなり、高い周波数に同調します。C12というコンデンサは、私が見た回路例では必ず付いているので一応入れておきましたが、今回の回路ではあってもなくても同じでした。

 ボリュームの回転角度と同調周波数、ダイオードにかかる電圧の関係を左に示します。ボリュームは約300度回転しますが、表では全回転範囲に対する百分率で表わしています。回転角度0%というのはボリュームを左に回しきった状態(上の回路図で言うとスライダーがR12側にある状態)で、このときバリキャップにかかる電圧は最小(0.55V)になります。ボリュームを右へ回すにつれて電圧が高くなり、受信周波数も高くなります。

 表を見ておわかりのように、ボリュームを100%回しきっても中波帯の上端まで届きません。1450kHzどまりです。この実験では、上の回路図のように、バーアンテナは5番端子(中間タップ)をアースにしています。つまりその分コイルのインダクタンスを減らしているわけです。それでも中波帯をカバーできませんでした。バリコンのときと同じようにコイルの1〜2番端子間を使うと、上限周波数はさらに下がって1350kHzくらいになります。

 以前、3端子ラジオIC・LMF-501Tを使ったラジオでバリキャップの実験をしたことがあるのですが、このときは逆電圧1〜9Vで中波帯をカバーできました。多分、真空管検波回路の入力容量が並列につながるために、周波数が上がりきらないのだと思います。個々のバリキャップによるバラつきはどうかと思って、同時に買った5個の1SV149を差し替えてみましたが、どれもたいした違いはありませんでした。また、ツェナーダイオードと直列にシリコンダイオード(順方向)をつないで最高電圧を0.6Vほどアップさせてみましたが、上限周波数は10kHz程度しか変化しませんでした。

 受信範囲の下は余裕があります。そのためR12という抵抗を入れて最小電圧を少し上げました。この抵抗がない場合、最低周波数は450kHzくらいになります。1450÷450=3.22ですから、受信周波数の最高と最低で3倍以上の範囲が確保できています。ということは、同調コイルにもっとインダクタンスの小さいものを使えば、中波帯の上から下までちゃんとカバーできるのかもしれません。

3. バリキャップ2個の回路

第3図

 なんとか市販のコイルで中波帯をカバーできないかと思い、第3図の回路を試してみました。2個のバリキャップを逆向きに直列接続したものです。FMラジオなどではこういう使い方をよく見かけます。これはうまくいきました。上も下も余裕があるので、ボリュームの両側に抵抗をつないで510〜1615kHzに調整しました。

 ボリュームの回転角度と受信周波数の関係は下の表の通りです。また下右のグラフはバリコンとバリキャップの周波数変化を比較したものです。バリコンでは高い周波数でダイヤルが詰まる傾向がありますが、バリキャップでは周波数変化が直線に近くなるので、上のほうでもチューニングが楽です。これは大きなメリットだと思います。なお、バリキャップを使った場合、上端と下端では周波数がほとんど変化しませんが、これは今回使用したボリュームが安物だからです。

回転角度 %周波数 kHz Vd DCV
05100.45
105200.56
206601.7
308302.8
4010553.9
5012505.0
6014306.2
7015307.3
8015808.5
9016159.5
10016159.5

グラフ

 実際に放送を受信してみると、バリキャップ同調は少し感度が悪いように感じます。チューニングにバリコンを使った場合、この2球ラジオは夜間には遠距離局が多数受信できるのですが、バリキャップに換えると遠距離局はぽつぽつとしか入感しなくなりました。ローカル局を聞いても少し音が小さくなります。ICラジオのときもそう感じました。ただ、この実験に先立って、真空管ラジオやICラジオにバリキャップを使用した製作記事をいくつか読んだのですが、そんなことを言っている人は誰もいませんでした。なので、今回の回路はもっと改良の余地があるのかもしれません。

 選択度に関しては、再生を利かせれば特に不満はありません。もっとも、感度が落ちたのでそのぶん切れが良くなったように感じたという可能性はあります。また、真空管のヒーターから電源を取ったことによるノイズの混入などは特に気になりませんでした。

4. 実体配線図と試作写真

 バリキャップ2個タイプの2球ラジオのブレッドボード配線図と試作写真を下に掲げます。バリキャップ周りの部品はボードの左端にまとめました。バーアンテナSL-55GTは、別項の製作記事で使用したものとは端子の出方が違います。

実体図

写真

 (2006年3月17日)

 真空管・再生検波1 目次へもどる
 トップページへもどる